前回のブログで、デンバーで開かれたASRM(アメリカ生殖医学会)においてPGT-A(着床前遺伝子検査)の結果が曖昧な場合、再検査が勧められることがあるとお伝えしました。今回は、同じくASRMで話題となっていた、次世代シーケンサー(NGS)を使用したPGT-Aの正確性についての議論を中心にご紹介します。
NGSを使用したPGT-Aの結果が誤っている可能性があることが、今回の学会で再度指摘されました。これは以前から問題視されていた点ですが、技術の進歩に対する楽観があったため、深刻には受け止められていなかったかもしれません。新しい技術を導入する際には、慎重さと進歩のバランスを取ることが非常に重要です。
PGT-Aは胚から得た数個の細胞のDNAを増幅して検査を行います。この増幅の過程で誤差が生じる可能性があり、その誤差を考慮した上で最終的な結果が出されるのですが、すべてコンピューターでの計算によってなされます。その際、増幅の過程で得られるデータを正確に解釈するために、特定の値を除外する作業も行われます。要するに、PGT-Aは、単純に血液検査をするのとは異なり、複雑なプロセスを経て結果が導き出されるのです。
より正確なPGT-Aを行うためには、SNP arrayという方法を使用して両親のDNAと比較することが推奨されます。SNP arrayでは、両親の遺伝情報を基に胚の遺伝子を評価するため、NGS単体での検査よりも高い正確性が期待できます。ただし、この方法を用いると、両親の採血やDNA解析にかかる費用が増加するというデメリットもあります。
NGSを使用したPGT-Aは、多くの可能性を秘めた技術ですが、その正確性にはまだ課題が残っています。技術の進歩を促進するためには、新しい方法を取り入れると同時に、慎重な評価と検証が必要です。このことを理解したうえで、例えば、胚移植の優先順位をつけるために行うのは有効だと思います。また、少なくとも流産の防止効果は得られることに間違いはありません。限界を踏まえたうえで、患者様にとって最善の選択を提供できるよう、最新の情報と技術を常に取り入れつつ、慎重に対応していきたいと思っています。
次回のブログでも、最新の生殖医療技術や研究についてお伝えしていきますので、楽しみにしていてください。
ART Baby Business COVID-19 DNA DNA量 Nature誌 PGT-A X染色体 Y染色体 がん デボラ・スパー氏 ハーバード大学 ホルモンバランス 不均衡型構造異常 不妊治療 不妊治療バブル 不育症 体外受精 保険適用 健康問題 健康状態 先天性異常 免疫療法 副作用 医療提供者 医療法人オーク会 均衡型構造異常 培養士 妊娠率 子宮内膜ポリープ 年齢 染色体 染色体検査 染色体異常 構造異常 治療法 流産 発達障害 精子 細径子宮鏡 自費診療 逆位 遺伝子 遺伝的多様性 高度生殖医療