最新研究で解明されたヒトの身長を決定づける分子メカニズム ― 多因子遺伝からomnigenicへ

最新研究で解明されたヒトの身長を決定づける分子メカニズム ― 多因子遺伝からomnigenicへ

DNA

ヒトの身長は遺伝的要因が大きく影響していることは広く知られていますが、その詳細は近年の研究で急速に明らかにされています。その進展に関して、2022年にNatureに掲載された論文と、今回Cell誌に掲載された論文をご紹介したいと思います。

1)Nature論文の発見:膨大なSNPが身長に影響していることが示唆されました。
https://www.nature.com/articles/s41586-022-05275-y

2022年のNature論文によると、500万人以上のゲノム解析から、身長に関連するSNPが1万2千カ所以上見つかり、それらがゲノムの21%にわたって存在することが示されました。この研究には多くの日本人研究者も参加しており、国際的な連携の成果と言えます。この発見は、身長が多因子遺伝であることを裏付けるものです。

2) Cell論文の最新知見:多因子遺伝からomnigenicへと発展しました。
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(24)01256-X

GWAS研究(1)により、身長の決定因子が広範囲の遺伝子群に及ぶことが明らかになりましたが、2024年のCell論文では、「omnigenic(オムニジェニック)」(4)という新しい概念が提唱されています。また、解析手法としてRNA-Seq(遺伝子の発現解析)(2)とATAC-Seq(染色体構造の解析)(3)が用いられました。そして、骨端や関節の軟骨に関わる分子の発現調節が、身長の決定に重要であることが示されました。この知見は、骨や関節の疾患研究、さらには再生医療に役立つ可能性が示唆されます。

身長を決定する遺伝的要因の全貌が解明されつつある一方で、新たな視点や手法が求められています。今後の研究への期待として、Omnigenicの概念のさらなる検証や、身長以外の形質にもこの手法が応用できるかが、重要になるでしょう。これらの研究は日々進化しており、最新の情報を共有することが重要です。引き続き、オーク会では関連する話題を取り上げていきます!

■用語解説

  1. GWAS(Genome-Wide Association Study:全ゲノム関連解析)
    GWASは、遺伝子の全体的な変異(SNPなど)と特定の形質や疾患との関連を調べる手法です。
    例えば、身長に関するSNP(1塩基多型)がどのように分布しているかを数百万人規模のデータから解析します。身長のような「多因子遺伝形質」では、GWASが非常に有効な手法です。
  2. RNA-Seq(RNAシーケンス解析)
    RNA-Seqは、細胞や組織で発現している遺伝子(mRNA)の種類と量を調べるための解析方法です。身長を決定する因子を調べる際、特に軟骨や骨端でどの遺伝子が活性化しているかを知るのに役立ちます。結果として、特定の分子や経路が形質にどのように影響を及ぼしているかが明らかになります。
  3. ATAC-Seq(Assay for Transposase-Accessible Chromatin using Sequencing)
    ATAC-Seqは、染色体構造の解析に使用される技術で、どの部分のDNAが「開いた状態」(活性化しやすい状態)であるかを調べます。身長研究では、軟骨や骨端の調節遺伝子がどのように制御されているかを理解するために使われました。この手法は、エピジェネティクス(遺伝子のオンオフ調節)解析において重要な役割を果たします。
  4. Omnigenic(オムニジェニック)
    Omnigenicは、「すべての遺伝子が形質に影響を及ぼしうる」という概念を指します。特定の「コア遺伝子」が形質の決定に直接関わる一方で、それ以外の多数の遺伝子が間接的に影響するというモデルです。身長に関する研究では、軟骨や骨端の成長調節を中心に、この概念が注目されています。
    詳細情報: https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201702237723643881

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