医師の船曳美也子です。
Cell-free DNA in human follicular fluid as a biomarker of embryo quality E.Scalici et al.
Human Reproducrtion, Vol.29, No.12 pp.2661-2669,2014
しばらく不妊ブログお休みしており、申し訳ございませんでした。産婦人科医師対象の「女性のヘルスケア啓蒙者養成講座」で「加齢と妊孕性」について、この12月に講義を行う準備をしておりました。この講座、内容は大変充実しており、来年も開催されるとのことですので、楽しみです。
さて、今回は、初めて卵胞液のCell-free DNAを測定し、胚のグレードとの相関をみた論文です。
結局、体外受精での出産率の向上は、いかによい受精卵を胚移植するか、に大きく依存しており、究極は胚盤胞の染色体検査になるわけですが、胚盤胞を凍結しなければならないリスクや、胚破砕のリスクなどがあります。
なので、よい胚を選別するための様々な非侵襲的な方法が検討されてきました。
Cell-free DNAとは、新出生前診断で有名になりましたが、細胞がnecrotic壊死したり、apototic細胞死する過程ででる、細胞骨格のないDNAです。卵胞閉鎖は顆粒膜細胞の多くの細胞死の結果であるわけですから、卵胞の中にもcfDNAはあるはずと考えたのが筆者らです。
この論文では、卵胞毎にCell-free DNAを計測し、その卵胞のサイズと、卵胞からできた胚のグレードを比較しています。すると、cfDNA量が少ない卵胞は、卵胞のサイズが>18㎜のものが有意に多く、また、良好胚が有意に多かった(D3胚でグレード2以上、分割数8以上、フラグメンテーション≦25%)という結論です。
また、このcfDNAが細胞のapotosisによるものか、necrosisによるものかも確認しており、やはり、卵胞液中のcfDNAは細胞のapotosisによるものでした。
イタリアでは新鮮胚移植は3つで残りは卵子凍結されます。
この方法が実用的になれば、特にイタリアで、どの卵子を受精させるかを選ぶのに、cfDNAは重宝されるのでは、と思いました。