46歳体外受精で妊娠、出産の報告

46歳体外受精で妊娠、出産の報告

医師の船曳美也子です。

Fertility&Sterility (vol.102No.1July 2014) の報告です。

Live birth from a 46-year-old using fresh autologous oocytes through in vitro fertilization Mark P. Trolice,M.D. Florida

彼女は、44歳未産で不妊治療にこられ、両側卵管閉鎖が判明。
その時点で、1回の人工中絶、2回の子宮筋腫核出術をうけておられました。
AMHも0.16ng/ml未満と非常に低値でした。が、46歳と85日で体外受精を施行したところ、4個採卵できて、4個胚移植し、そのうちのつで無事妊娠、出産されました。

具体的な経過は「*具体的なプロトコールと経過」をごらんください。

彼女の場合、46歳で妊娠されただけでなく、21週で頸管無力症になるも緊急頸管縫縮術が奏功。
28週で破水するも、31週まで胎児の心拍は正常。と、いくつもの幸運がかさなっての出産できたことを感じる症例です。

報告には、この記事は注目されるだろうが、高齢での妊娠出産に過度の期待をもたせることが懸念される、と同時に、46歳で自分の卵子による妊娠・出産はまだ望みがないわけではないと考える、とあります。

実は、当院でも体外受精により46歳で妊娠し、特にトラブルなく(帝王切開でしたが)出産された方がいらっしゃったので、これぐらいのことで症例報告にのるの?と、いうのが正直な感想でした。
アメリカでは40歳以上になると、卵子提供や、養子が勧められます。

なので、自分の卵子でというところが、新鮮なのかもしれません。
が、産婦人科医であれば、おもわず最後に、本当によかったね!と拍手してしまいたくなるような、妊娠後のドラマチックな経過も、雑誌に掲載された理由ではないかと私は思っています。

*具体的なプロトコールと経過

  • まず、ピル10日間内服後、レトロゾール(フェマーラ)5㎎を5日間内服。
    レトロゾール2日目からリコンビナントFSH(ゴナールF)300IU 連日皮下注射します。
  • 刺激5日目、血中E2は60pg/ml でPは1.72ng/mlで、主席卵胞計は平均15.5mmでした。
    GnRHアンタゴニスト(ganirelix、セトロタイドと同じ)250㎍連日皮下注射を開始。
  • 刺激9日目、E2は265 pg/ml でPは1.7ng/mlで、主席卵胞計は平均41mmと他11-17mmの卵胞を7つ認め、内膜は10.18mmでした。同日HCG10000単位筋注、36時間後採卵。
  • 4つ採卵できすべて顕微授精し、Day3にステージ7、7、6、4と4つの胚を(!)
    アシステッドハッチングして、子宮内移植。ET後14日目の血中βhCGは300IU/mlと妊娠陽性。
    妊娠7週でGSが一つ確認できました。
  • 黄体補充は、経皮的E2 パッチ(エストラダームと同じ)0.1mgを週2回2枚ずつ、50mgの黄体ホルモン筋注連日し、妊娠後はmicronized P200mg 膣錠を12週まで使用しています。
  • 妊娠21週で軽度の腹部圧迫感があり産科医受診。子宮口4㎝開大していたため、緊急頸管縫縮術施行。
    妊娠28週前期破水します。妊娠31週胎児心拍に異常みとめたため、緊急帝王切開で1580gの男児を出産し、現在4か月、正常発育をしています。