こんにちは。医師の船曳美也子です。
今日は、日本産科婦人科学会年次大会シンポジウムで発表された、早産の原因や対策についての演題をご紹介したいと思います。
なぜ不妊ブログで紹介するかというと、原因不明の不妊や不育症の原因のひとつに、早産と同じしくみのものがある、と考えるからです。
早産の主原因は子宮の炎症です。
炎症というと、のどがはれて痛みを伴って、と悪いイメージしかないと思います。実は、炎症は、女性の体内では生理現象として必要で、排卵も、着床も、月経も、分娩も局所的な炎症の結果生じています。
つまり、適切な時期、適切な量の炎症は体に必要なものなのです。
ただ、適切な時期、適切な量でないと、早産になるというわけです。
同様に、着床という現象でも、慢性的な子宮内膜炎があると、障害されます。
では、なにか、予防法はないのでしょうか?
今回の発表では、その早産対策として、以下の三つが示されていました。
ひとつは、歯周病をなくすこと、ひとつは、腸内細菌叢を整えること、ひとつは水素水の摂取、です。
発表では、歯周病菌をもつマウスの子宮内膜にも菌を認め、かつ、その周辺の炎症物質が上昇するため、子宮筋のCaイオン流入とギャップ結合の亢進する、また、炎症で増えたオキシトシン受容体のため子宮収縮がおこっていました。
また、人体の呼気の14%を占める水素は、腸内細菌叢のクロストリディウムやバクテロイデスが産生しています。水素は、神経炎症の抑制効果があります。腸内細菌叢の悪化で、水素発生が減ると炎症を起こしやすいというわけです。
早産の方では、呼気中水素濃度が有意に低かったようです。
すべてマウスでの実験結果だけで、すぐ人間に応用できるか、本当に効果があるかはわかりません。
ただ、何か予防や対策がないですか?ということに対し、少なくとも、歯周病対策と腸内細菌叢を整える対策というのは、健康を保つという点からも、勧められるのではと思いました。
Study on molecular basis of preterm delivery induced by inflammation:
Hiroshi Miyoshi:Hiroshima university
A new strategy for reduction of severe disabilities of children born at
preterm caused by intrauterine inflammation Tomomi Kotani Nagoya University