卵子凍結

卵子凍結

医師の船曳美也子です。

私が2009年に参加したアメリカ不妊学会総会では、卵子凍結は、技術的に可能であると主張する積極派と、まだ実験段階であるとする慎重派が、シンポジウムで議論している段階で、まだまだ一般的なイメージでありませんでした。

その後は、徐々に、卵子凍結の妊娠率は胚凍結とかわらないという報告が散見されるようになり、去年の学会誌では、もう実験的というレッテルをはずすべきだという投稿がみられました。

そして、今年1月のアメリカ不妊学会誌で、ようやく、卵子凍結のガイドラインが発表され、卵子凍結は実験的治療であるというレッテルははがされることになりました。

受精卵の凍結は、体外受精を経験されているかたには、ごく一般的な治療であることがおわかりでしょう。
では、卵子の凍結がなぜ問題になっていたか。卵子は精子と受精する前は、まだ核が未熟な状態にあるので、未熟な卵子を凍結しても、受精させるとき、うまく分裂せず、胚の染色体異常が増えるといわれていたのです。

しかし、これは凍結技術の進歩により解決されました。1月のアメリカ不妊学会のガイドラインでは、卵子凍結の妊娠率は、受精卵の凍結融解の妊娠率と変わらないこと。実験的治療でないこと。染色体異常などが増えないこと、がうたわれています。
ただ、加齢の問題を回避する目的で卵子凍結を勧めるのには十分なデータはない、という慎重なコメントもついています。

しかし現実は、アメリカの、少なくともNYでは、卵子凍結を希望する女性が、続々とクリニックを訪れているようです。
6月3日、「昼食討論会」というアメリカのテレビ番組で、ニューヨーク不妊センターのNicole Noyes医師がインタビューで答えていました。「以前は38歳ころの女性が多かったが、今は36歳かそれより若い人が増えている。今日の午前の外来は全員卵子凍結希望者だったわ。」

当院では、現状、卵子凍結希望で来院されるかたは、まさしく、38歳前後の方です。が、今後、時代のニーズにつれ、かわっていくかもしれない、と思いました。