日本受精着床学会に参加しました…その3

日本受精着床学会に参加しました…その3

こんにちは。検査部垣井です。

先日軽井沢で開催された第34回日本受精着床学会に参加しました。
様々な興味深い演題がありましたが、最近注目されているミトコンドリアの研究についての発表がありましたのでご紹介します。

「ミトコンドリア」という言葉をテレビ等のメディアでもよく耳にしますが、どのような働きをしているのかあまり知らない方もいらっしゃるかもしれません。ミトコンドリアは細胞の様々な活動に必要なエネルギーの大部分を産出するとても需要な役割を担っています。
ミトコンドリアの機能低下や数の減少は細胞老化や様々な疾患を引き起こしてしまいます。生体にとってミトコンドリアの機能を正常に維持することは極めて重要なのです。ミトコンドリアは卵子の中にも存在しています。ここでも同様にエネルギーを産出する働きをしており、質や量の低下は卵子の老化を招いてしまいます。

今回、このミトコンドリアの機能維持にはミトコンドリアの形態変化が密接に関与しているという報告がありました。高品質なミトコンドリアは融合と分裂を繰り返すのですが、ミトコンドリアの分裂を引き起こすタンパク質の1つにDrp1があります。このDrp1の慢性的な蓄積はミトコンドリアの劣化と分解を促進することがわかっています。

そしてDrp1の毒性を抑えるタンパク質として「MITOL」が新しく同定されました。
MITOLはDrp1を抑制して、ミトコンドリアの分解を抑制する働きをしていますが、加齢やストレスにより減少してしまうと報告がありました。つまりMITOLの減少によりDrp1が増加しミトコンドリアの分解が促進され、結果的に細胞老化が引き起こることが示唆されました。

この発表では老化のメカニズムの1つが報告されましたが、これらの研究が進むことで卵子の老化防止や若返り等が可能になるかもしれません。他にも色々なアプローチでの研究発表があり、どの施設も患者様にあった医療の提供ができるように日々取り組んでいることが伺えました。

今後も研究の発展に期待していきたいですし、当院もそれぞれの患者様にあった医療の提供ができるように励んでいきたいと思います。