こんにちは。培養士の川瀬です。
Poor ovarian response is associated with serum vitamin D levels and pro-inflammatory immune response in women undergoing in-vitro fertilization
Journal of reproductive immunology, 2019年11月号からの論文紹介です。
当院のブログでもたびたび紹介をしているビタミンDや葉酸の重要性を再認識する論文です。
今回紹介する論文は、IVFで妊娠しなかった人の中で、採卵数が少なく血中ビタミンD(V.D.)値が低下していた人は、炎症促進性免疫反応とホモシステイン値が高値であり妊娠の継続に適さない状態であると報告しています。サプリメントなどで血中V.D.値を高め、代謝を改善することで卵巣の低反応を改善しうるのではないかとしています。
○方法
今回の研究では、IVFで妊娠しなかった157人の女性を卵巣の反応性と血中V.D.値を軸に以下A~Dの4群に分け、血中の免疫細胞やホモシステイン値など妊娠に適さない状況と関連する項目を測定しました。
A(18人):採卵数3個以下 かつ 血中V.D.濃度30 ng/mL以下
B(30人):採卵数4個以上 かつ 血中V.D.濃度30 ng/mL以下
C(40人):採卵数3個以下 かつ 血中V.D.濃度30 ng/mLより上
D(69人):採卵数4個以上 かつ 血中V.D.濃度30 ng/mLより上
○結果
- 血中の障害性NK細胞の割合(NK細胞の割合が高いほど妊娠しにくいといわれています)
A群(15.5±2.7%)は他の3群(B:9.2±4.5, C:8.7±4.2, D:9.0±4.2)に比べ有意に高値であった - 血中Th1/Th2比(比が高いほど妊娠しにくいといわれています)
A群(39.9±3.5%)はB群とは有意差がなかったが、他の2群(C:34.5±8.0, D:34.6±5.0)に比べ有意に高値であった - 血中ホモシステイン値
A群(8.8±1.3 µm/L)は他の3群(B:7.4±1.6 µm/L, C:7.1±1.6 µm/L, D:7.7±1.7 µm/L)に比べ有意に高値であった - 血中V.D.値の低下は卵巣機能の低下や習慣性流産のリスクを高めることが知られています。今回の結果では、卵巣の反応性は血中V.D.値に関係なく年齢に比例していました。
○考察
本論文で新たに分かったことは、A群のように血中V.D.値も低く卵巣の反応も低い人では、障害性NK細胞などの炎症促進性免疫反応が高値になっているだけでなく、ホモシステインの代謝異常などもリスクとなることが明らかになったことです。
つまり、卵巣の反応が良くない方で血中V.D.値が低い方はV.Dや葉酸のサプリメントを摂取することでIVFの結果の改善が期待できるかもしれない、としています。
また、ホモシステイン血症は習慣性流産や妊娠性高血圧と関係しており、葉酸やビタミンB12の不足が原因で発症します。A群で炎症促進性免疫反応のみならず血中ホモシステイン値も高値であったことから、著者らは代謝と免疫メカニズムが複雑に関係し合った結果、卵巣の低反応に至ると考察しています。
採卵数が少ない方は、一度血中V.D.を測定してみてはいかがでしょうか。
もしもV.D.値が低い場合でも当院ではV.D.サプリメントの購入が可能です。
気になる方は医師に相談してみてください。