こんにちは。検査部の木山です。
今日は卵子についてご紹介したいと思います。
お母さんのおなかの中にいるころ(胎生期)、胎児の卵巣では卵原細胞が細胞分裂を繰り返し、一次卵母細胞を形成しています。その周りを卵巣内の結合組織が包み込み、卵のもととなる原始卵胞が形成されます。
つまり、生まれる前、胎生期にはすでに一生分の卵が胎児の卵巣の中に存在しているのです。卵子というのは特殊な細胞で、一度できるとそれ以上数が増えることはなく、あとは減っていくのみとなります。
卵子は成熟段階に応じてGV期、MI期、MⅡ期の3段階に分類されます。
卵子は減数分裂という特殊な細胞分裂を経て成熟に至ります。
GV期とは減数分裂の途中(第一減数分裂前期)で分裂を停止した状態のことで、この時期には核小体を持つ大きな核(卵核胞 Germinal Vesicle: GV)が存在しています。
減数分裂の過程で染色体が増幅されるのですが、卵核胞の中には通常の2倍の染色体が入っています。
排卵直前に起こるLHサージというホルモン刺激をきっかけに卵核胞の核膜が消失します(卵核胞崩壊 Germinal Vesicle Break Down: GVBD)。この段階がMI期です。その後、過剰になっていた染色体が第1極体として卵細胞質と透明帯の隙間に放出されます。この段階がMⅡ期で、卵子は第1極体を放出して初めて受精能力を獲得し、成熟卵となって排卵します。
採卵は排卵が起こる直前に行うので、採卵された卵子は通常は受精能力を持つ成熟卵(MⅡ期)です。しかし、卵胞を複数個穿刺すると、発育が遅い卵胞から未成熟卵(GV期・MI期)が採れることもあります。
このような未成熟卵は顕微授精を行っても正常に受精しません。
当院では、このような未成熟卵を特殊な培養液で培養して成熟させる体外成熟培養(In vitro maturation: IVM)を行っています。 IVMを行うことで、通常なら受精・発育することができない未成熟卵も受精し、移植や凍結ができる可能性が出てきます。採卵された卵に少しでも妊娠の可能性がある限り、できるだけ卵の潜在能力を引き出すことで患者様のお力になれればと思っております。