こんにちは。胚培養士の小畠です。
先日沖縄コンベンションセンターで開催された第58回日本卵子学会学術集会に参加してきました。
今回は教育講演や、特別講演、シンポジウムなどを中心に色々な発表を聞いてきましたが、その中で大変興味深い発表がありましたので紹介させて頂きます。
不妊治療の着床に関しては、胚移植後の子宮内での胚発育や子宮内膜への胚の接着・侵入は直接観察することができないためブラックボックスの状態です。子宮をMRIにより連続撮像し、子宮内膜や筋層の蠕動・収縮している動きをタイムラプスの動画として表現するcineMRIという技術を用いて子宮の動きを解析して、子宮の動きと妊娠成立の影響を検討する発表でした。
一般的に、月経期は内容物排出の為子宮底部から頸部方向へ、排卵前は子宮頸部から底部への収縮が起こり、排卵後はその頻度は急速に低下し、着床期には動きが停止することが分かっています。
卵管水腫では排卵期に子宮収縮が逆方向に頻回に認められ、子宮腺筋症では着床期に子宮頸部方向への波状収縮が、原因不明不妊症では着床期に持続的収縮や、頻回の収縮を認める症例がありました。卵管水腫では卵管切除により正常化が見られ、原因不明不妊症に関しては抗コリン剤の投与で妊娠が成立した症例があったそうです。
今まで着床期の子宮内の動きを見たことがなく大変興味深かったです。
cine MRIによる子宮の機能的解析により、子宮の収縮異常がもたらす産科合併症の研究や、妊娠の成立や維持など今後多くの場面で有効な治療法の開発へつながると思います。今後も注目していきたいです。