培養士の幸田です。
最近、論文や学会発表で培養液の話を目にする機会がよくありました。
先日のブログでもお伝えした通り、当院では培養液の比較・検討をおこなっています。
培養液には大きく分けてシングルステップメディウムとシーケンシャルメディウムの2種類あります。まず、シングルステップメディウムとは卵を培養する際、培養液の組成を変えずに培養を行う培養液です。
次にシーケンシャルメディウムとは、シングルステップメディウムとは異なり培養3日目のときに、培養液の組成を変えて培養する培養液です。
受精後3日目頃の初期胚は、卵管内で発育し、その後胚盤胞になる4~5日目頃に子宮内に到着します。
卵管液と子宮内腔液とでは、成分が異なるため胚はステージによって必要とする栄養が異なります。
ですから、シーケンシャルメディウムでは体内でのステージに合わせて3日目に培養液の組成を変え、シングルステップメディウムでは卵管・子宮両方の成分を含んだ組成になっているわけです。
しかし、どちらの培養液にもメリット、デメリットがあります。
これらの培養液について、学会発表などでは、様々な病院の培養士や医師の方が比較をし、実験および考察の内容の発表をしていました。受精率や妊娠率は、培養液の種類では有意な差は出ていないとのことでした。
ですが、逆に有意差が出るという意見もあり、当院ではシングルステップメディウムが胚の状態がより良いという結果になり、シングルステップメディウムを採用することにしました。
培養液も新しい製品が出ることや、また、使い方によっては培養成績が変わることもあります。
当院では患者様にとって最も良い培養液を選択できるよう今後も情報収集を続けていきます。