ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)に参加しました

ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)に参加しました

培養士の佐治です。

先日、スイスのジュネーブで開催されたヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)に参加してきました。

その年その年で注目の話題がありますが、今年は幹細胞を使用した卵子若返りや子宮内膜の再生の研究、次世代シーケンサーを使った着床前診断の解析に関する研究が多かったように思います。
そのほかにも多嚢胞性卵巣症候群や卵巣刺激に関する研究もまだまだ盛んで、生殖補助医療はまだまだ発展途上であることを改めて感じます。

当院では培養士が採卵後に採卵数を説明させていただくのですが、その際患者様からよく聞かれる質問があります。採卵数について、「採卵数が多い方がいいのか」「多すぎると卵子の質が悪いのか」といったものです。

今回の学会で採卵数と妊娠率の関係を研究している発表がいくつかあり、少しはそういった疑問の答えになるのではないかと思うので紹介させていただきます。

一つはスウェーデンの研究グループから、一回の採卵で得られる採卵数が20個までは妊娠率が採卵数に比例して上昇していくというもの。
採卵数が多いとそれだけ移植する回数が増えるということなので、ごく当たり前の結果だと思うのですが、もう一つ別の研究グループは採卵数が15個までは採卵の個数に比例して妊娠率が上昇するが、それ以上は採卵数が増えても妊娠率は上昇しなかったという結果を発表していました。
こちらは同じ採卵周期から凍結胚を使用した第二子の妊娠率も検討しており、第二子の場合でも15個までは上昇するが、それ以上は採卵数に比例しないという結果でした。
いずれの研究も採卵数が多すぎると、卵巣刺激症候群のリスクがあがり患者様にとって良くないとも言っています。

これらの結果は1回の採卵で15個程度卵子を得ることがベストであることを示唆しています。
ただ、多いからと言って妊娠率が低下してしまうわけではないので採卵数が多すぎると卵子の質が悪いということではないと思われます。

さらに、これは採卵数が少ないと結果が悪いということでもありません。
採卵数に比例するということは少ない個数でも採卵回数を増やしていけば妊娠する可能性があがることを示しています。

注意していただきたいのは、この結果はあくまで採卵1回当たりの採卵数と妊娠率の関係であって、多数の卵子が採れた場合でも、残念ながら100%の妊娠率が保証されるというわけではありません。
効率の良い治療計画をたてるために、このようなデータを参考にしていただけたらと思います。