医局カンファレンスです。
男性の年齢が顕微授精による妊娠率に及ぼす影響の有無についての論文を紹介します。
(Human Reproduction 2014;29:2114-2122)
2007年2月から2010年6月までの、スペインでの後ろ向きコホート研究です。
男性年齢が5歳上昇する毎に、精液量は0.22ml(P<0.001)、運動精子率は1.2%(P<0.001)ずつ減少し、精子濃度は3.1×100万/ml(P=0.003)ずつ増加する結果となりました。
しかし、男性の年齢と妊娠率、生産率、流産率との間に関係はありませんでした。(男性の年齢が高くなっても、妊娠率は変わらなかったということです)
(解説)
今回は男性が22歳から81歳で平均41.1歳、60歳以上が65名いました。
すべて18歳から35歳までの女性の提供卵子を使っています。
結果としては、35歳以下の卵子と顕微授精すれば、妊娠率、生産率、流産率は男性の年齢によって変わらないということです。
精子は細胞質がほとんど無いため、DNA(遺伝子)を修復する酵素をもっていません。卵子は細胞質があり、遺伝情報を正確に伝達するために傷ついたDNAを修復する機構が備わっています。このことから、若い卵子の細胞質は精子の損傷した遺伝子を修復することができるのではと考えられます。
また、精子濃度が増加するのは精液量が減少したためと考えられます。ちなみに、体外受精の場合は加齢と共に妊娠率が低下するという報告や変わらないという報告があります。
今回の論文を読んで、精子と卵子が受精しお互いに足りない部分を補いながら分割していく姿と人間の理想の『夫婦像』と重なる部分があるんだなと感じました。