理事長の中村嘉孝です。
今日は、本当にセクシーな免疫の話。スイスのウェデキンドという学者が、大学生を対象に実験しました。
44人の男子学生にTシャツを2晩着用してもらい、次に50人の女子学生にそれらのTシャツの匂いを評価してもらったところ、自分とMHCの型が似ていない男子の体臭を好むことがわかったというのです。
MHCというのは細胞の表面にある物質で、細胞の血液型のようなものです。
免疫では重要な役割を果たしており、臓器移植では、当然、MHCの型が似ているほど拒絶反応は少なくなります。 では、なぜMHCの型をかけ離れた男性を好むのかというと、進化論的に、次のように説明がされています。MHCはウィルスなどが感染したときに、免疫細胞に知らせるという役割も持っており、型が異なる者同士が子どもをつくることで、より多様な感染症に対応できる子孫を持つことができる。
実際、MHCが体臭に影響を与えることがわかっているマウスでは、体臭によって配偶者選択を行なっていることが確認されています。人間の場合、MHCによってはっきりと匂いが違うというわけではないようですが、無意識にその違いがわかるようです。
同じような匂いでも、セクシーに感じるものと不快に感じるものがあり、それが、いわゆる「フェロモン」によるのではないかと考えられています。
免疫と生殖の、複雑なメカニズムには驚くばかりですが、本当にどこまで確かな話なのかは、今後の研究を待たなくてはなりません。
とはいえ、学術的な評価は別にして、進化生物学の配偶者選びの話は、飲みながらする医学ネタとして、うってつけではあります。
でも、気をつけて下さい。
恋愛に免疫のない男子にだけは、うかつにこの話をしてはいけません。
「3日ほどシャツを替えない方が、フェロモンがでてモテるかも」なんて、本気で考えかねないですから。