理事長の中村嘉孝です。
日本学術会議が声明を出してから、ホメオパシーの議論が激しくなっています。
私も「荒唐無稽」というのはその通りだと思いますが、なぜ、声明はホメオパシーだけを問題にしているのでしょうか?
朝日新聞社のサイトに学術会議の副会長のインタビューを見つけたのですが、別に、新生児の死亡事故があったことを憂慮してのことではないらしいのです。長いですが引用します。
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「きっかけは、私が友人の外国人研究者から、海外でのホメオパシー事情を聞いたことです。
2~3年前だったと思います。
ホメオパシーに根拠がないことは、医学も含めた科学の世界では常識になっているのに、現実の社会では「医療」として保険適用がされていた。それが欧州での実態でした。
発祥の地とされるドイツや、スイスなど、保険適用から外す国も出てきましたが、英国のように今でも保険適用されている国もあります。
制度として国が認めているわけだから、国民の間に浸透することを止めることは難しい。
科学的に何の根拠もないものが、医療として国民の間に広がってしまっている実態があるわけです。
友人は科学者として、私に『日本は、そうならないうちに手を打つべきだ』とアドバイスしてくれました。
そこで、金沢(一郎・日本学術会議)会長に相談し、関係機関との連携や、取るべきアクションを模索し始めました。
これがちょうど1年半ほど前だったと思います。
今年7月、山口県での事件が報道されたことで、我々は準備を急ぎました。
そしてようやく、発表にこぎ着けたのです。」
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だったら、なぜ、事業仕分けであれだけ保険適用について議論があった漢方薬について触れないのでしょう。どうして、保険給付されている鍼灸には触れないのでしょう。まだ根付いていない治療法なら、批判しても世論の賛同が得られやすいということでしょうか。
実際、漢方薬の議論では、マスコミ世論は擁護にまわりました。
助産師特有の非科学的主張についても、これまでマスコミ世論は好意的で、助長さえしてきました。
今回も、助産師会が主催でホメオパシーの講習会をしていたようですが、今回に限らず、助産師特有の論理から起きた事故はいくつもあります。私には、許しがたいことのように思えますが、世論は必ずしもそうではありません。
一方、代替医療の側も「科学」を名乗るから議論がややこしくなりますが、本来は科学に対するアンチテーゼであることが代替医療の存在価値です。
しかし、自らも「科学」を名乗らなければ、宗教になってしまって、アンチテーゼになり得ません。
ですから、その「科学」を、「似非科学」と批判しても無意味です。いわゆる「科学」と違うであろうことは当人にも大方分かっていることであり、むしろ「代替科学」とでもいうべきものなのだろうと思います。
気の毒な事件によってホメオパシーに注目が集まっていますが、本質は、ホメオパシーが有効か、無効か検証すべきなどという問題ではありません。
根本的には、多少の実害があったとしても社会が非科学的思考の実践を容認することの是非でしょう。
私は賛同しかねますが、それが国民の望むところであり、より心地よい社会ということもあり得るわけです。
ホメオパシーのみを標的とする今回の声明では、むしろ本質的な議論から遠ざかってしまうように私は思います。