啼泣

啼泣

理事長の中村嘉孝です。

漫画家のさかもと未明さんがJALの機内で泣き続ける乳児に立腹、クレームを入れたとツイッターで公表したことで、議論が沸騰しているそうです。

さかもとさんの心情もわからなくもないですが、大昔から「泣く子と地頭には…」というのが通り相場で、乳児にはどうやっても勝てるはずはがありません。
いくら勝気なさかもとさんといえども、今回ばかりは、泣き寝入りするしかないでしょう。

私も、新幹線で新大阪から新横浜を過ぎるまで、ずっと隣の席の子どもさんが泣き続けていたことがありました。別に私は気にしていなかったのですが、お母さんは、よほど、申し訳なく思われたのか、「これ、食べます?」といってバナナを一本くれました。ようやく泣き止んだその子と並んで、東京駅まで黙々とバナナを食べていました。

むしろ、産婦人科医にとっては、赤ん坊が泣かない方が困ります。
生まれてすぐに、オギャーと泣くのを第一啼泣というのですが、それまでは、羊水の中で浮かんでいたのが、第一啼泣よって肺胞がふくらみ、呼吸が始まるわけですので、もし、泣かないとなると大変です。
必死で処置をする中、刻々と時間が過ぎていき、こちらが泣きそうになるのですが、オギャーと泣き声が上がると、ほっとして、全身が虚脱状態になります。

今、顕微鏡の下で静かに眠っている受精卵が、数ヶ月後にはオギャーと産声を上げる日を楽しみに思いながら、職員一同、今日も仕事に取り組んでいます。