理事長の中村嘉孝です。
iPS細胞の山中教授がノーベル賞に選ばれました。
まことに慶賀すべき受賞であり、自称、ハーバード大学客員講師による臨床試験の発表というおまけまでついて、にぎやかなことでした。そして、クラリオンガールご出身の蓮舫氏によって仕分けされたiPS細胞の研究費も、文部科学省から今後10年間に300億円が投じられることになったようで、何よりです。
iPS細胞からは、あらゆる臓器の細胞を作り出すことができるので、病気で障害された臓器を再生することができるという「画期的な技術」です。しかし、それが「夢のような技術」なのかというと、私には、正直なところ疑問があります。
他の医療技術もそうなのですが、若い患者の命が救われることには諸手を挙げて賛成できます。
しかし、加齢や生活習慣で起きてくる疾病を取り除き、不老不死が実現したとしたら、それは本当に夢のような素晴らしい世界なのでしょうか。
一方でiPS細胞は生殖医療の分野でも、きわめて重要な技術となっています。
あらゆる細胞に分化するということは、体細胞だけではなく、生殖細胞もできるということで、例えば、早発閉経で妊娠をあきらめざるをえなかった方でも、皮膚の細胞をとってきて卵子を作ることができるからです。
これは、「夢のような技術」です。
個体の延命のための不老不死の医療と、次の世代に命をつなぐ生殖医療は、根本的に理念が違います。
残念ながら世間では、高年齢の女性が出産することなど、生殖技術へのアレルギーが強いようですが、私には、不老不死の技術の方が、よほどグロテスクなことに思えます。