理事長の中村嘉孝です。
セブンイレブンのざるそばをすすりながら、『蕎麦屋の常識・非常識』(片山虎之介著、朝日新書)を読んでいると、「生蕎麦」の読み方について書いてありました。
「茹でる前の麺は生蕎麦とかいて『なまそば』と読む。つなぎを入れない十割蕎麦の場合も同じく生蕎麦と書くのだか、こちらは『きそば』と読む。…だから茹でる前の十割そばなら、『きそば』の『なまそば』ということになる。いや、『なまそば』の『きそば』と読む場合もあるわけだ。」
頭がこんがらがってきましたが、要するに、蕎麦屋で注文するときは「きそば」と言えということのようです。さて、おいしい蕎麦屋といえば、「手打ち」と相場が決まっていますが、著者によると、ていねいに作れば機械打ちでも十分においしい蕎麦ができるそうです。手打ちと機械打ちの大きな違いは、手打ちでは表面に小さなヒビができるために、つゆの付きが良くなること。
もしかしたら、東京のつゆが濃いのは、機械打ちが多く、つゆが付きにくいためかも知れないということでした。
さて、当院でのアシステッド・ハッチングも、以前はマイクロニードルによる手作業でのみ行っていましたが、少し前からレーザー装置を導入して機械で行うようにしています。
何年も前からレーザー装置の売り込みがあり、デモは何度も行ってきました。
確かに作業は簡単になるものの、開口形状に違いや、理論的に熱損傷のリスクが捨てきれないなどの理由で導入には慎重を期していました。幸い、導入後の成績にも問題がなく、安心しています。
また、たいていの場合にはレーザー・ハッチングで十分なのですが、もちろん、必要な状況では、手作業で行うようにしています。
ところで、本の中で面白かったのは、江戸時代の「相生そば」という店の話。
「この店では客が『そば』と注文すれば『あい』といって出し、『うどん』と注文すれば『おい』と言って出した。ところが、出されたものは、蕎麦もうどんも同じものだったという。…江戸の人々はこれを面白がり、評判になった」
蕎麦屋で「藪」といえば一流の暖簾ですが、医療機関では逆。
蕎麦屋の話がそのまま参考になるわけでもないですが、手を抜くとすぐに味が落ちる蕎麦作りの話を読みながら、「少なくとも、これだけは不妊治療も同じだ」と襟を正した次第です。