妊娠パパ

妊娠パパ

理事長の中村嘉孝です。

数年前の、あの映像を覚えておられるでしょうか?
髭を生やした「男」が出産する、その「妊娠パパ」ことトーマス・ビーティーさんの離婚のニュースです。

http://www.narinari.com/Nd/20120818740.html

ビーティーさんは、男性となって女性と結婚したものの、奥さんが重症子宮内膜症で子宮摘出していたことから性転換手術を受けず、自分が変わりに、ドナー精子による人工授精で妊娠、出産。髭面のマッチョな「男」が分娩台で陣痛に耐える姿が、世界中に報じられました。

残念ながら、このカップル、その後、諸般の事情で不仲となり、現在、離婚の申し立てをしているのですが、状況が複雑なので簡単にはいきません。

ハワイ州で結婚しているものの、ご存知の通りアメリカは州によって法律が違い、離婚を申し立てているアリゾナ州の裁判所では、「子どもを産むことのできる人を男性とは認められない」という理由で、「結婚がそもそも無効」ということになりそうな気配とのこと。

私自身は、どんな形でもこの世に子どもが生まれてくるのは喜ばしいことだと思っていますから、それを規制するよりは、技術の進歩に合わせて、法の整備が進むべきだと思うのですが、現実には、家族法に限らず、法律は事実を後追いするものでしかないのでしょうね。今回の件で、性転換カップルに対する感情は別にして、生殖技術の現状に合うような判例ができればいいですね。

ちなみに、私は性転換カップルに寛容なように思われるかも知れませんが、本当に共感できるのかというと話は別。正直、アリゾナの裁判所と同じく、妊婦さんが「男」というのは、強い心理的抵抗があります。

さて、件の離婚訴訟。弁護士は「『結婚は無効』となった方が慰謝料を支払わなくてすむから有利」と伝えているらしいですが、御本人は「そんな結果は望まない」と、あくまで「離婚」の成立を目指すとのこと。

性転換に共感できない私でも、このコメントだけは、「まさに、男の中の男」と思いました。