理事長の中村嘉孝です。
欧州ヒト生殖胚学会(ESHRE)に参加するために、先週はイスタンブールに行ってきました。
朝の5時半に到着し、8時半からスタートの結構きついスケジュールでしたが、非常に実りのある学会でした。
一つは、ヒステロスコープと内膜バイオプシーによって着床率が上がるという結果が、世界中の無作為化試験で出てきたことです。
実は、当院でも同様の結果が出ており、近日中に着床不全の新しい治療法として、ご案内をする予定になっています。
子宮内膜のバイオプシーをすると、あたかも「畑を耕した」かのように妊娠がしやすくなることは、経験のある産婦人科医の間で、かなり昔から言われていました。
しかし、一方で子宮内膜の損傷は癒着を引き起こし、アッシャーマン症候群など不妊の原因となることも知られています。
このため、やみくもに子宮内膜バイオプシーを行えばよいわけではなく、適切な時期に、適切な方法で、適切な部位に行い、内膜の修復機転を考えて内分泌環境や胚移植の手技などを考慮する必要があります。
もう一つは、早期黄体化の問題です。
卵巣刺激周期でLHが少し早くあがってしまうことがあるのですが、このために排卵前に卵胞が黄体化し、そこから出るプロゲステロンが内膜に影響して着床を妨げることが、わかってきました。
それを避けるために、排卵刺激法を色々と検討、工夫することもできるのですが、むしろ、全胚凍結してホルモン環境が整った融解周期で胚移植すべき、というのが結論でした。
もちろん、これまで当院でも早期黄体化が疑われる場合には、必要に応じて全胚凍結をしてきていますが、スクリーニング的にプロゲステロン値の測定を行うかどうか、現在、検討をしている最中です。