理事長の中村嘉孝です。
診療報酬の改定で、小児や喘息患者を診る病院が全面禁煙にしない場合には、報酬を減額する、という報道がありました。
妊娠にかかわる当院としては、以前から施設内を全面禁煙にしています。
もちろん院内だけではなく、他所でも禁煙していただくに越したことはありません。
とくに不妊治療中の皆さまは、「禁煙は妊娠してから」ということではなく、不妊治療自体にも悪影響を与えますので、ご夫婦ともにすぐにでも禁煙していただいたくようにお願いします。
喫煙はホルモン剤の使用時に血栓症リスクを高めますし、血流の減少によって卵巣機能や造精機能を低下させます。
まあ、そういった一般的な禁煙の啓蒙は大切だと思うのですが、一方で、現在の禁煙推進の動きは少々行き過ぎではないかとも、私は思っています。
最近も、日本産科婦人科学会から「今後、喫煙者は専門医になれない」という通知がきたのですが、異様な感じがしました。
喫煙の問題は要するに
- 受動喫煙
- 社会的コスト(医療費)
- 本人の健康
の三点にあります。
しかし、1への対応は分煙であって、禁煙ではありません。
「いや、喫煙者が息をするだけでも微量の受動喫煙になっている」という意見があることは承知していますが、いくらなんでも言いすぎです。
2については、「むしろ、早死にするから安いですよ」という意見もありますし、お金の問題なのであればお金で解決すべきこと。実際、すでに重税が課せられています。
ですので、禁煙運動の根拠は3に尽きるということになりますが、喫煙はあくまで個人の責任の範疇の問題であって、自らの健康を犠牲にしても楽しみたいと思うことは人生の中にいくらでもあります。
もちろん、医師である以上、健康のために留意すべきことを伝えるのは当然のことですが、健康にどれだけの重きを置くかは、結局はその人の選択。酒と色に溺れて身を滅ぼす者、雪山で命を散らす者、昼夜を徹して働き志半ばで世を去る者、さまざまな人生模様を私たちは「美しい」と感じます。
人生の価値は、自らの命や健康を超えたところにこそあり、生命至上主義、健康至上主義は、むしろグロテスクでさえあります。
そんなわけで、時流に逆行することを申し上げて恐縮ですが、私は、医者があまり禁煙を押し売りするのも如何なものか、と思っているのです。
ちなみに、私自身はタバコを吸いません。理由はずばり、匂いがつくと女性に嫌われるから。
世の男性がもっともっと喫煙して、自分だけがモテるようになるといいな、といつも夢想しています。