間違いだらけの医療安全

間違いだらけの医療安全

理事長の中村嘉孝です。

最近のLancetに、医療安全についての面白い論考がありました。

医療の安全というと、少しでもミスがなくなるようなシステムを作ることから始まるわけですが、ミスは多くても、大事故は少ないシステムというものがあり得るのではないか、という議論です。
なにか強弁や屁理屈のようにも聞こえますが、私も、直感的にあり得ると思います。

医療安全のための規制や指導によって、色々なマニュアルや書式や委員会が作られていますが、医療において「ミスはあってはならない」とすると、いきおい硬直化したシステムになります。しかし、あまりに志が低いように思われるかもしれませんが、「大きな事故だけは、なんとか避けたい」というスタンスのほうが適切なように思います。また、医療施設の規模によってもやり方を変えるべきでしょう。

エンジニアリングのような思考法が医療にとってベストとは限りません。「野生の思考」を生かした医療システムのあり方が必要なのだろうと思いました。

「我々は自己の過失を利用しうるほどは長生きしない」
―ジャン・ド・ラ・ブリュイエール