理事長の中村嘉孝です。
生命倫理学のセミナーに行ってきました。
モナシュ大学のRob Sparrow博士という方が、”A Not-So-New Eugenics: Harris and Savulescu on human enhancement” というタイトルで話をされました。
「Eugenics」というのは優生学のことで、「human enhancement」とは人工的に人間の身体や頭脳の能力を高めることです。
「Harris」と「Savulescu」というのは倫理学者の名前で、彼らは「生殖技術が発達した現在、親は、その技術を用いて最も優れた子供をつくる『道徳的義務』がある」という主張しています。
体外受精で遺伝子診断をして、もっとも優れた形質をもった胚を移植することが、「道徳上の義務」だというのです。
聞くだけで不安感を煽られる議論なのですが、ナチスをイメージさせる旧い優生学と違い、「倫理的に正しい新しい優生学」であるとのこと。
生命倫理学というと、現代の医療を批判する主張だけがマスコミに取り上げられ、生命倫理委員会のように監視機構としての役割を求められるわけですが、本来は、極端な主張をしては議論を重ねながら、人間と社会の本質に迫る、もっと面白い学問だと思います。
哲学者を中心とした10人ほどの小規模の会で、熱心な討論が続きました。
私には概要をつかむだけで精一杯だったものの、とても興味深いセミナーでした。