Oak Journal Review:子宮内膜の厚さから移植結果の予想は可能か?

Oak Journal Review:子宮内膜の厚さから移植結果の予想は可能か?

こんにちは。検査部の鈴木です。
今回の動画では、7月12日に開催いたしましたOak Journal and Case Reviewより、私が紹介したOak Journal Reviewの内容をお届けします。

紹介した論文は、
Endometrial thickness is not predictive for live birth after embryo transfer, even without a cutoff.
Shakerian B, Turkgeldi E, Yildiz S, Keles I, Ata B. Fertil Steril 2021;116(1):130–7.
です。

この論文では、子宮内膜の厚さと胚盤胞移植での結果の相関関係を調べて、子宮内膜の厚さから移植結果を予想可能か検討しています。
移植した胚が着床して妊娠が成立するかを決めると考えられる要因は、胚側の要因と子宮側の要因に分けることができます。

胚側の要因としては、胚のステージやグレード、染色体の数的な異常の有無などがあります。また子宮側の要因としては、胚を移植する時期(着床の窓)と子宮内膜の厚さなどがあります。これらの要因は、胚のステージやグレードは培養士が目で、染色体の数的な異常はPGT-A(1)で、着床の窓はERA検査(2)で、子宮内膜の厚さは超音波検査で調べます。
子宮内膜の厚さと移植結果の関係については、これまでにも多く行われています。超音波検査は、PGT-AやERAに比べると一般的な検査ですので、胚のステージ(グレード)と共に子宮内膜の厚さが移植結果を占う指標として使われる事があります。その基準となる子宮内膜の厚さとして、7mmという数字を聞いたことのある患者様も多いかと思います。
しかし子宮内膜の厚さと移植結果の関係については、子宮内膜の厚さと結果に相関関係が見られるとする論文と、反対に相関関係は見られないとする論文が出ており、まだ結論が出ていません。

今回の論文で興味を引かれた点は2つあります。
一つ目は、子宮内膜が薄いからという理由で移植がキャンセルになることが無いという点です。この研究が行われた大学病院では、子宮内膜の厚さに関係なく移植を行っています。
2つ目は、胚盤胞のみを移植した結果を用いて関係性を検討している点です。子宮内膜と移植結果の関係は古くから行われているので、これまでの研究結果には分割期の胚を移植した結果も多く含まれています。

そのような子宮内膜の厚さに関係無く胚盤胞を移植するという条件の元で行われた結果はどのようになったのでしょうか? 詳しくはこちらの動画でご確認ください。

参考
1.PGT-Aは、胚盤胞の細胞を一部採取して、次世代シーケンサー(NGS)を用いて染色体の数的な異常を調べる検査です。詳しくは、「着床前スクリーニング(PGT-A)の臨床研究」を参照してください。

2.ERA検査は、子宮内膜の細胞を少量採取して、「着床の窓」(着床可能な時期)にずれが無いか調べる検査です。もし、ずれが見つかった場合には、患者様毎に適した時期に移植を行います。
https://www.oakclinic-group.com/funin/era.html