検査部の奥平です。
8月1日に院内で開催された勉強会より、論文紹介(Oak Journal Review)の内容をお届けします。
今回ご紹介する論文は、
Cleavage-stage human embryo arrest, is it embryo genetic composition or others?
Orvieto R, Jonish-Grossman A, Maydan SA, Noach-Hirsh M, Dratviman-Storobinsky O, Aizer A.
Reprod Biol Endocrinol. 2022 Mar 17;20(1):52.
です。
胚盤胞移植は、分割期胚移植と比較して、胚移植あたりの着床率や妊娠率が高いのはよく知られています。そのため、受精卵を胚盤胞まで育ててから移植もしくは凍結するのが一般的な治療法となっています。胚盤胞まで育てるメリットとしては、体外での生存能および発育能が高い胚がわかることにより移植に適した胚を選別することができます(故に胚移植あたりの成績が高くなります)。
一方、デメリットとしては、長期培養の結果として移植/凍結できる胚の数が少なくなってしまう、あるいはゼロになってしまい、胚移植がキャンセルとなるリスクがあることです。胚移植まで進めませんと妊娠の機会が得られませんので、胚盤胞まで培養して高い妊娠率を期待するか、day3で培養を終了してなるべく多くの胚を残すか、難しい選択となります。
受精卵が胚盤胞まで育つ確率は一般的に30~40%ぐらいであり、胚は、培養環境、代謝不良、DNAの損傷など様々な要因で発育が停止することが知られています。また、胚の異数性(染色体の数の異常)も胚盤胞までの発育に影響するとする説もあります。過去の研究では、1) 正倍数性胚(染色体の数が正常)では胚盤胞形成率が高かった、2) 発育が停止した胚では異数性率が高かったことが報告されています。しかしながら、異数性が胚盤胞までの発育に直接的に寄与するかどうかは議論の余地があります。
そこで、本論文では、胚盤胞まで発育した胚と途中で停止した胚の倍数性を評価し、異数性と胚盤胞までの発育との関連を検討しています。論文自体はページ数が少なく結果も表一つにまとめられていますが、非常に興味深い内容です。
詳細は動画をご覧ください。