絨毛採取によるメープルシロップ尿症の出生前胎児診断

絨毛採取によるメープルシロップ尿症の出生前胎児診断

福益博 谷口如

2024年某日、木曜日。晴れ。今日は東京で絨毛採取(CVS)が行われる日。目的は常染色体潜性遺伝の先天性代謝異常疾患であるメープルシロップ尿症(MSUD)の出生前診断です。

オーク梅田クリニックから銀座のクリニックに向かうため、新幹線で東京へ出発。

6時前に起床し、「元祖カニすし」という鳥取の駅弁(青い箱にカニの絵が描かれた名物)を買って、新大阪から新幹線に乗車。 伊吹山や浜名湖の美しい景色を楽しみながら、朝食の駅弁をいただく。列車が新富士駅周辺に差し掛かった時、車窓一面に姿を現した雪化粧をまとった富士山、今日の富士は格段に美しくその雄大な姿は得も言われぬ絶景、もし「世界の美しい車窓100選」があるとすれば、間違いなく上位に選ばれるであろう、そんな素晴らしさでした。まもなく東京駅に到着、有楽町から徒歩で参上しました。

さて、今回の患者は近隣の医院からの紹介患者です。妊娠12週目で、この診断が可能なクリニックを探されて来院されました。エコー検査により胎盤の位置を慎重に特定。胎盤は子宮後壁にやや低めに付着しており、経膣法と経腹法のいずれからでもアプローチが可能な位置にあります。

こうした場合、細い針を用いた経腹法を優先し、リスクを最小限に抑えるのが基本的な対応です。

処置室に移動し、無菌野を確保してガイド付きプローブを用意しました(外筒18G、内筒20G)。

絨毛採取は1回の穿刺吸引で成功、シャーレに絨毛を移した後に不要組織を除去し、検体をスピッツに入れて検査へ提出。作業は数分で完了し、細い針で先に局所浸潤麻酔を施し、患者の痛みもほとんどなく、2~3時間後に帰宅できます。そして1週間後には結果が判明し、児がメープルシロップ尿症の患者であるか、あるいは保因者、または非保因者かがはっきりします。今回は遠方の患者さんなので、オンライン診療で結果説明と遺伝学会専門医指導医によるウンセリングを行い、今後の方針や患者のケアには万全を期します。 

当院では臨床遺伝学会遺伝指導医も在籍し、安全な手技で外筒つき採取針を用いた超音波ガイド下の絨毛採取により、トリソミーやいろいろな遺伝性先天疾患の胎児確定診断を行っています。

絨毛採取検査(CVS) というと、すこし怖い痛い印象をお持ちの方もおられるようですが。実際は10分程で検査は終了します。午後来院され夕方までには帰路につくことが可能です。検査の正確度も羊水検査とほぼ同等の精度です。
トレーニングを積んだ医師による安全な検査ですので、胎児精密超音波でNT(項部浮腫)などが見つかった場合や、脳脈絡膜嚢胞 あるいは 静脈管逆流や三尖弁逆流、他院でNIPT検査異常を指摘された場合の診断確定や遺伝的要因の診断に必須です、羊水検査の場合20週まで確定検査と診断ができませんが、絨毛採取(CVS)検査の場合は12週後半から13週前半の最適採取時期に採取し、確定診断までの期間を短縮することができ、母体の精神的負担を軽減する意味でも非常に役立っています。 本検査の窓口は当院オンラインヘルプセンターへ電話で検査希望の旨をお伝えいただくだけで大丈夫です。

患者様のみならず医療関係者様からのご依頼もお待ち申し上げております。


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