子宮内膜生検は、内膜癌の診断や、慢性子宮内膜炎の有無を調べるために使用される重要な診断手段です。特に不妊治療の現場では、慢性子宮内膜炎という状態が着床率を下げる要因として知られており、その有無を確認するために行われることが多いです。なお、慢性子宮内膜炎は実際の炎症というよりも、内膜内の免疫系の反応や細菌の影響によるものとされ、典型的な骨盤腹膜炎や子宮内膜炎とは異なります。
さらに、不妊治療においては「子宮内膜スクラッチ」という手技が行われることもあります。これは、内膜にわずかな刺激を与え、内膜の再生を促すことで着床率を高めようという試みです。このスクラッチは、内膜生検と同じ手技で行われることも多いため、両者は混同されがちですが、目的や意図は異なります。
2023年に東京大学の研究チームが『International Journal of Gynecology & Obstetrics (IJGO)』に発表した論文では、子宮内膜生検後の予防的抗菌薬投与が骨盤内炎症性疾患(PID)の予防には効果がない可能性が示されました。具体的には、抗菌薬がPIDの発生率を減少させないという結果が得られ、ルーチンとしての使用は推奨されないという結論に至っています。
この研究では、RCT(ランダム化比較試験)を行うことが難しい問題に対して、医療ビッグデータ(医療リアルワールドデータ:RWD)を活用した因果推論が試みられました。このアプローチにより、実際の臨床現場でのデータに基づいた新たな知見が得られました。
一方で、抗菌薬の投与は不妊治療の現場では広く行われています。特に、子宮内操作を伴う検査や手技では予防的に使用します。例えば、当院でもIFCE(慢性子宮内膜炎検査)などの際には、感染の予防目的で抗菌薬を使用しています。
また、名古屋大学の研究では、抗菌薬が子宮内膜症の治療の有力候補であることが示唆されています。この研究成果は、2023年に『Science Translational Medicine』に掲載され、抗菌薬が不妊につながりやすい子宮内膜症を予防する効果があるとすれば、不妊治療におけるアウトカム改善に貢献する可能性があることが示されました。現在、名古屋大学では臨床研究が進行中であり、今後の成果に大きな期待が寄せられています。
このように、抗菌薬の使用に関するエビデンスは不妊治療の分野でも多様化しています。予防的投与の効果がないという新たな研究結果が出る一方で、治療目的での使用にはポジティブな影響が期待されるケースもあります。重要なのは、抗菌薬の使用を目的や症例に応じて適切に選択し、エビデンスに基づいた判断を行うことです。
これからも、抗菌薬の使用に関する適切なガイドラインの策定や、臨床研究による明確なエビデンスが求められるでしょう。オーク会としても、最新の研究成果に注目し、実践的な治療法を提供できるよう、今後も努力を続けていきます。
参考
https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijgo.16156
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2023/06/——.html
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