現在、ハンガリーで開催されている国際産婦人科超音波学会(ISUOG)では、初日に帝王切開後瘢痕症候群に関する興味深い講演がありました。かつて、帝王切開は非常にリスクの高い手術で、死亡率が7割にも及んでいました。しかし、現代の医療技術の進歩により、現在では非常に安全な手術と考えられています。
とはいえ、帝王切開後の合併症についての理解が深まるにつれ、いくつかの新しい問題も明らかになってきました。その一つが、帝王切開の際にできる子宮前壁の瘢痕に関連した問題です。この瘢痕が完全に癒合せず、楔状に開く「ニッシェ」と呼ばれる状態が、帝王切開を受けた女性の約60%で見られると報告されています。このニッシェが存在すると、不正出血や不妊の原因となることがあり、これは多くの女性にとって深刻な問題です。
帝王切開による出産の割合は、世界全体で約30%ですが、日本では約22%と報告されています。この数値は、適切とされる20%を少し超えているものの、適応に関しては日本ではしっかりと見極められていると言えるでしょう。とはいうものの、当院でも、帝王切開後の瘢痕に関する問題に対応するケースが少なくありません。
ニッシェが妊娠の妨げになるかどうかを評価するのは困難で、サイズや深さが影響するとされていますが、標準的な評価基準が確立されていないため、診断や治療の判断には慎重さが求められます。
当院では、こうした問題に対して常に最新の知識と技術を導入し、患者様に最適な治療を提供できるよう努めています。腹腔鏡下手術(創部切除)が効果的という論文も多々ある中で、それが不可逆的な治療になることや、さらなる合併症を引き起こす可能性も踏まえ、現時点で当院でもっとも取り入れているのは、ホルモン療法で、しっかり成果が得られています。ニッシェに関する新しい研究成果や治療法の進展についても、今後の診療に反映させていく所存です。