HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)

HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)

妊娠成立に伴い上昇するホルモンにHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)があります。
今回はこのホルモンのお話です。HCGは妊娠判定時に測定される物質で、尿の妊娠判定にも使われています。
ただ、尿の検査では、陽性もしくは陰性の判定しか出来ないために、詳しく調べる場合定量もしくは判定量の検査を行います。

20年以上昔には、1日尿を集めて半定量検査をしていました。
大学病院ではそれは研修医の仕事で、外来や手術などが終わってから2時間ほどかけ調べていました。
現在では、多くの施設で血液中のHCGの定量を行っています。これは血清を機械に乗せて20分程度で結果が出るために、ずいぶん楽になったものだなと思います。

血中HCGの測定は非常に感度の良い検査で、妊娠もしくは妊娠に類似した病気(異所性妊娠や絨毛性疾患、流産などでも)でも上昇します。
妊娠反応は4週から陽性になるため、そこから1週間たち5週になってもGS(胎嚢)が子宮内に確認できない場合やHCGの値が3000mIU/ml以上(1500~2000としている場合もあります。)でGSが確認できない場合は、異常妊娠を疑います。

HCGは妊娠により急激に上昇します。
妊娠5週で平均7000mIU/mlであったものが、妊娠10週には平均10万mIU/mlまで上昇し、その後ゆっくり下がっていきます。そのためよく流産後に、妊娠反応が陽性なのですがという相談を受けますが、経験上経過良好であっても、流産後1月くらいは妊娠反応が陽性になることはあるようです。

HCGは糖タンパクホルモンに分類されているのですが、このホルモンはほかに、TSH(甲状腺刺激ホルモン)、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)があります。これらのホルモンは、構造が非常に似ているために、それぞれが結合刺激するレセプターを違うホルモンが刺激することがあります。

HCGは、弱いTSH作用を持つために、妊娠によりHCGが上昇すると、甲状腺を刺激して、血圧上昇や動悸などの甲状腺刺激症状を起こすことがあります。
もともと甲状腺亢進症をもたれているかたは特に注意が必要です。また、HCGは、LHレセプター刺激作用(LH/hCGレセプターとされている)があるので、採卵の際に卵子を成熟させ排卵を促すLHの変わりに、不妊治療の現場でよく使われています。