外来で精液検査の結果を説明するときに、精液の量、精子の数、精子の運動率とともに精子の正常率形態の話をします。精子の正常形態率はわかりやすくいうと奇形精子の割合とのことになります。
良くここでその精子を使うと奇形児が生まれるのですかとの質問が出るのですがそれは違いますと説明します。
不妊治療に当たって、異常が出る、奇形があるとの話には非常に皆さん敏感なので、精子の正常形態率が65%ですなどと説明すると、奇形精子が35%もいるのですかとビックリされます。
しかし、精子は1mlあたり何千万個(精子は生物ではないので正確には匹ではなく個と数えます。)も造られ、精子の形態異常は沢山見られます。以前のWHOの基準では精子の正常形態率が15%以上の場合正常とされていました。これは精子の異常が84%であっても正常精液所見と判断することです。
更に最近は、精子の正常形態率が5%までが正常であるとの診断に変わってきています。95%に精子の異常があっても、正常と判断します。もちろん顕微受精などで精子を選ぶ場合は正常形態のものを選んで行うのですが、そのような精子が確認できないような奇形精子症(正常の形態精子がいないような場合)でも、ICSIで妊娠、出産まで行きます。
奇形精子は精子の形の異常であって、本当に胎児の異常に関係する染色体の異常を表しているわけではないのです。ただし、児が男の子の場合は、父親の形質を受け継ぐことから、子供に奇形精子症を受け継ぐことはあります。