子宮内膜症と不妊治療

子宮内膜症と不妊治療

先日、研究会があり「当院で行なった卵巣子宮内膜症(チョコレートのう胞)アルコール固定症例の検討について」の演題で発表してきました。
不妊治療を受けられている患者様はご存知と思いますが、子宮内膜症は、不妊の原因になります。
また、子宮内膜症は非常にありふれている疾患で外来時よく診察させていただいています。

一方、子宮内膜症は不妊のほかの症状としては、きつい月経困難症などがあり、病気は月経が起こっている年齢の間進んでいきます。
ひどい方は腸にまで進展し下血を起こすことさえあります。

当然、その症状により治療法は異なっており、子宮内膜症の根治術は子宮と卵巣の摘出になっています。
当院では不妊患者様をメインにしているため、子宮内膜症合併不妊ガイドラインを適応することが多いのですが、3cmを超えるチョコレートのう胞がある患者さんではstageⅢ以上(Re-AFS、revised American Fertility Societyの分類、現在のアメリカ生殖医学会)と推定され、重症にあたります。
このような場合は、治療法として、チョコレートのう胞の吸引やアルコール固定を選択することにより後の採卵数が増えると日本産科婦人科学会が報告しています。

以前のガイドラインでは、アルコール固定後の再発率は非常に高く、感染などのリスクを伴うため、第一選択とは推奨されないとなっていました。
これは、その通りで、研究会でも腫瘍を専門とする先生から治療の方法に対し疑問視する声が上りました。
チョコレートのう胞は、近年がんの発生母地(がんになる原因)になっていることが指摘されています。
特に、40歳以上でのう胞サイズが大きい(8cm以上)患者さんは注意が必要です。

さらには、感染から腹膜炎となり緊急搬送されることもあります。
実際に当院でも、チョコレートのう胞を持ちIVF治療を行なっている患者さんで、重症の感染症となり搬送させていただいたことが多々あります。
搬送を快く引き受けて頂いた病院、先生方には非常に感謝をしています。
感染を起こしたチョコレートのう胞は手術により病巣を除去することが必要であると思います。

ただ、不妊の患者さんにとっても、卵子の回収は治療を続けていく上で大切なことなので、さまざまなリスクや再発の問題はありますが、一時的であっても卵巣のダメージを極力少なくし治療を行なうことは、不妊治療の重要な部分であると考えています。