医師の田口早桐です。
最近、値段が下がったことも影響してか、NHKで年齢が上がると妊娠しにくくなるという趣旨の番組が放映された影響か、とくに不妊治療をされていなくても卵巣年齢検査を希望される方が増えてきました。
AMH(抗ミュラー管ホルモン ant-müllerian hormone)のことです。
採血をして、三週間後には結果が出ます。
卵巣年齢とは、卵巣予備能のこと。卵巣予備能とは、不妊治療において、卵巣刺激に対する反応性のことです。
卵巣の反応の善し悪し(注射を打ってどのくらい卵が育つか、取れるか、ということ)は、治療の成否に非常に重要ですから、非常に大切です。
他に卵巣予備能を測る方法はいくつかあるものの、AMHは、簡便なこと、加齢によって最も早く変化するマーカーであること、年齢と相関し、月経周期中の変動が少ないことなどで、不妊治療プロトコールを考えるにあたり、よく用いられています。
AMHは、女性の卵巣内で、これから育ってゆく中間段階の卵胞(前胞状卵胞、小胞状卵胞)のなかに存在し、原始卵胞(最もおおもとの初期の段階の卵胞)が育ってゆくのを防ぎ、さらに中間段階の卵胞が発育してゆくのを抑える…ややこしいですが、要するにできるだけ卵胞をキープするように働いているのです。
AMHが高いということは、卵巣が中間段階の卵胞が多くあるということになり、卵巣刺激に対する反応が良いことが予測されます。
卵巣年齢が若い、ということになるのです。
この、抗ミュラー管ホルモンですが、ついつい女性に特有のものと考えてしまいますが、実は、男性にもあります、というより、一番最初は、精巣中に存在する、ミュラー管の退縮を促す物質として同定されたのです。
我々が胎児の時期、母親の胎内で生殖器が作られる際に、ミュラー管と呼ばれる部分が女性器(子宮、卵管、膣の一部)に発達していきます。
胎児が男性の場合は、抗ミュラー管ホルモンが精巣から分泌されて、女性器に発達してゆくのをブロックする、というわけです。
(ちなみに、男性器に発達していく部分は、ウォルフ管といいます。勇ましい名前ですね。)
今では、卵巣予備能の代名詞みたいになっていますが、もともとは男性のものだったとは。
意外だったでしょうか?