医師の田口早桐です。
体外受精を仕事にしていると、せっかく大事に分割を見守ってきた受精卵が着床しない時には、がっかりします。
と同時に原因がはっきりしないことが多いので、非常に無力感を感じます。体外受精を受ける側にとってももちろんそうですが。
先日、ある勉強会に参加していると、皆口を揃えて、「体外受精はもう、最後の砦『着床』に行き着いた。」と、言っていました。
「着床のところだけは、人間にコントロールさせない。こっちでやるから、君たちは黙って見ときなさい」と神様が言っているような気さえします。
「卵子もいい、精子も、いい。受精もいい、受精卵のグレードも良好。子宮にも問題なし。子宮内膜もきれい。…でも、今回は着床していません。」と、お伝えするときの情けなさ。
なぜだか説明できないことが多いのです。
「私が自転車に乗っていたからでしょうか?」「機会があって少しお酒を飲んでしまいました。それが原因でしょうか?」と、自分を責める方もいます。
着床、着床、着床…。
今、オーク住吉産婦人科は、このテーマを中心に研究をしています。
2年前から着床不全と習慣性流産の特殊外来を開設して臨床面から取り組んできましたが、研究として、ドクター、培養士、ナース、全員総出でいろいろな角度から取り組むことになりました。
特に以前から北宅先生が基礎的な研究をされていることもあり、レベルの高い内容が期待できます。
さて、先日、そんなことを考えながらぼんやりとエレベーターに乗っていましたら、「着床」がどうのこうの、と書いてあって、ドキッとしました。よく読んでみると、「停電時自動着床装置」のことでしたが、「着床」には他の意味もあることを、初めて知りました。