医師の田口早桐です。
Live birth rates after MESA and TESE in men with obstructive azoospermia: is there a difference?
Human Reproduction, Vol.30, No.4pp.761-766,2015
射出精液中に精子がいない状態の無精子症。原因は大きく分けて、「閉塞性」か「非閉塞性」かの二種類です。つまり、作られているのに運べていないのか、そもそも作られていないもしくは作る量がとても少ないのか、ということです。
どちらのタイプかという診断はすぐにはできません。最終精巣精子を採取してからの判断になることも多いです。
この論文は閉塞性無精子症において精巣精子を取る場合と、精巣上体という、精巣精子がいったん集まるところから取るのか、どちらのほうが顕微授精後の生産率が高いか、ということを調べています。
この施設ではまず精巣上体から注射器で中の液を吸い出すことによる精子採取を試み(MESA:microsurgical epididymal sperm aspiration)、それで精子が採取できなければ、精巣そのものから精子採取を試みる(TESE: testicular sperm extraction)という順序になっています。
結果は、TESEよりもMESAのほうが生産率が高いと言う結果になったそうです。
私自身の印象では、TESEの精巣精子のほうがMESAの精巣上体の精子より古くない分、受精などは良いように感じていたので、意外でした。
ただし、著者も論文内で述べているように、MESA で精子が見つからなかったものについてのみTESEをしているのでバイアスがかかっていることは否めません。かなり偏っていると考えたほうが良いかも知れません。
当院ではTESEを行う際、できるだけ同じ日に採卵して新鮮な精子を受精させています。もちろんそれとは別に精巣精子の凍結はしておき、初回の採卵から妊娠が得られなかった場合に使用します。
この論文中では新鮮精子と凍結精子では生産率に差がなかったということでしたが、これも私の印象と違うので、当院でもデータ解析してみるつもりです。
また、MESAとの比較も検討していきたいと思います。