医師の田口早桐です。
A randomized double blind comparison of atosiban in patients undergoing IVF treatment
Human Reproduction, Vol, No.12pp.2687-2694, 2014
胚移植が体外受精の最終段階になります。
以前は安静にする方がよいと言われていたので、胚移植後に数時間ベッドで安静にしてからお帰りいただいていましたが、安静にしてもしなくても結果が変わらない、むしろ動いたほうが良かったという報告もあったりしましたので、今は当院でも特に移植後の安静を指示していません。
ただ、ご本人の強い希望があった時や、遠方からの来院でその日はゆっくりして帰りたいというような要望がある場合は院内のお部屋で過ごしていただくこともあります。
さて、胚移植の際に、どうすれば着床率を上げることが出来るかというのは、常に重要課題です。
例えば、assisted hatching(透明帯開口術)、当院での取り組みとしてはHCG子宮内注入、embryo glueといって子宮内に接着しやすくなる作用のある培養液の使用、などがあります。
胚の側に着床に至らない原因があるとしたら、効果は望めないのですが。
この論文では、胚移植の際に子宮収縮が起こることが良くないのではないかという推測のもと、胚移植時にatosibanという子宮収縮を抑制する薬を点滴して、その効果を評価しています。
Atosibanを使用した群としなかった群にランダムに振り分けて調査した結果では、残念なことに、着床率、妊娠率、生産率等に差が見られませんでした。また、子宮筋腫があるなど、子宮収縮を起こしやすい人には効果があるのかというと、それも差が出ませんでした。
着床に問題があって、少しでも効果が得られる方法なら何でも試したいところですから、atosibanには注目していました。今までに効果があるとされる報告もあったので導入を検討していた矢先でした。
導入自体は現在見送りですが、さらなる報告結果と併せて検討はしていきたいと思います。