医師の田口早桐です。
Neonatal outcome after preimplantation genetic diagnosis
Fertility and Sterility Vol.102, No.4, October 2014
新生児の出生体重、早産率、子宮内胎児発育遅延の割合などについて、自然妊娠で生まれた新生児、顕微授精によって生まれた新生児、そしてPGDを施した胚から育った新生児、の3群で比べて分析しています。2005年から2012年までに生まれた新生児です。前方視的調査で、それぞれのグループは母親の年齢やBMIなどの背景因子を一致させています。
結論。顕微授精のグループでは、出生体重が軽く、早産率が高く、子宮内胎児発育遅延になる傾向が強かった、ということでした。
この研究の目的である、PGDを行うことによるネガティブな影響は、認められませんでした。
PGDも顕微授精も、胚に侵襲を加える操作ですが、PGDに関しては、Blastomere biopsy(分割してきた割球の一つを取る)であれpolar body biopsy(放出された極体を取る)であれ、自然妊娠と差がなかったので、新生児への影響はまずないと言えるでしょう。
しかし、では、顕微授精の操作そのものが、新生児への影響につながっているのかというと、定かではありません。というのは、顕微授精をするに至った原因として、通常の不妊治療や体外受精では妊娠しなかったという経緯があり、その背後にある要因が、新生児の低出生体重や早産等の結果につながっている可能性があるからです。
ともあれ、現在、着床前診断はほとんど分割期でなく胚盤胞ステージで行われます。
その手技による新生児に対する影響がきちんと評価されるのは、もう少し先になることでしょう。