医師の田口早桐です。
Tamoxifen co-administration during controlled ovarian hyperstimulation for in vitro fertilization in breast cancer patients increases the safety of fertility-preservation treatment strategies Fertility and Sterility Vol.102, No 2, August2014
前にこのブログでも述べたように、乳がん患者さんの卵子凍結、受精卵凍結が増えています。タモキシフェンは乳がんの薬ですが、この論文は、排卵誘発に加えてタモキシフェンを使った場合にホルモンの状態や排卵誘発の結果に影響が(悪い)影響があるかどうかを調べたものです。
乳がんにエストロゲンが悪い作用を及ぼすことが多いので、できるだけエストロゲンが上昇する状態を避けたいので、エストロゲンを上昇させる排卵誘発剤を使うことを躊躇します。
ただ、大抵は抗がん剤使用までの数ヶ月しか採卵の余裕が無いことも多く、自然周期でちまちま採っているとほとんど凍結保存が出来ないこともあります。そこで、乳がん治療と採卵(将来子供を持てる可能性を残すこと)のバランスを考える必要があります。
この論文で、タモキシフェンを使用している若い乳がん患者では、すでに血中エストロゲン濃度が充分高いこと、タモキシフェンを使用しても排卵誘発作用は劣らないこと、が分かりました。
タモキシフェンは乳がんを抑える働きがあるのですが、それは乳がん組織のエストロゲンレセプターをブロックするからであり、エストロゲン値を下げて治療効果に繋がるわけではないから、排卵誘発でタモキシフェンの効果が弱まる事は心配しなくてよく、また、タモキシフェンを使ったせいで、卵巣の反応が減弱するわけでもないので、排卵誘発する際に使っておくと良いのではないか、という結論でした。
非常に参考になりました。