レトロゾールでの排卵誘発

レトロゾールでの排卵誘発

医師の田口早桐です。

Letrozole versus clomiphene for infertility in the polycystic ovary syndrome
New England Journal of Medicine 7月号の記事です。

レトロゾールというのは当院で使用している薬剤でいうと、フェマーラ。
もともとは閉経後の乳がんに使用する薬ですがクロミッド(クロミフェン)と似た働きがあり、卵胞の発育を促します。
閉経していると思われた乳がん患者さんで卵胞の発育を認めることがあり、不妊治療に使われるようになってから数年になります。

ただ、排卵誘発の第一選択として使われることは少なく、どちらかというと他の排卵誘発剤に対する卵胞発育不良例や乳がん既往例など、「他に選択肢がなくて」、使用することが多い薬剤でした。

ただ、もともと乳がんの薬だけあって、エストロゲンの値を低く保つ作用があります。
今回発表された研究は、750名ほどの、妊娠を希望している多嚢胞性卵巣の女性を同数の2グループに分けて、生産率を比較したデータについてです。

多嚢胞性卵巣は、排卵障害が主症状の、不妊治療を行っている立場からは非常に多く目にする状態です。
排卵誘発剤でなかなか排卵せず、しかし体外受精などで連日注射を打つといきなり過剰反応して卵巣過剰刺激症候群を引き起こす、非常にコントロールの難しい状態です。
クロミッドが第一選択でよく効く例も多いのです。

今回の報告は、体外受精でなく、いわゆるタイミング療法で妊娠を試みている女性についての報告ですが、明らかにレトロゾールが妊娠に有効であるようなので、我々も体外受精の際の排卵誘発に、今までのように消極的にではなく積極的に使用できると思います。