医師の田口早桐です。
Preconception stress increases the risk of infertility:
results from acouple-based prospective cohort study-the LIFE study
Human Reproduction, Vol.29, No.5 pp. 1067-1075, 2014
ストレスと不妊との関係は何度かこのブログでも取り上げていますし、私自身も体外受精の着床率との関係を調べて学会発表もしてきました。
ただ、ストレスの程度を測る、といってもなかなか難しく、身長や血圧を測るようにはいきません。
当たり前ですが。
ストレスを数値化するためには、心理テストなどのような質問紙法があります。
ご本人に質問のうち当てはまるものを選んでもらって集計します。
またそれ以外の方法としては、体の中でストレスによって増える物質を測るという方法があります。
その中で注目を浴びているのが、唾液中のアミラーゼとコルチゾールです。
この2物質は、ストレスを受けたときに違う経路で反応して増えます。唾液で測定できるため、採血のように痛みも手間もかかりません。便利なのでよくストレス指標として使われます。
今回の論文では、体外受精でなく、373カップルを12ヶ月追跡して、唾液中のアミラーゼやコルチゾールが高いと妊娠しにくいのかどうかを調べています。
結論からいうと、唾液中のアミラーゼが高いと、妊孕性が29%減少し、不妊であるリスクは2倍になる、という結果だったということです。ちなみにコルチゾールが高くても、妊孕性への影響はなかったようです。
ストレス耐性は個人によってとてもばらつきが大きいとは思いますが、ストレスがいろいろな疾患の引き金になるのは周知の事実です。不妊に対しても何らかの形で影響を及ぼしていると考えています。
今後当院でも、体外受精結果に対するストレスの影響については、調査を重ねて行きたいと思っています。