医師の田口早桐です。
精子の保存の話です。小分けにして凍結するにも、どのくらいずつにすると良いのか、という論文です。
Thawed human sperm quality is influenced by the volume of the cryopreserved specimen Fertility Sterility 3月号より
この論文では0.5mlずつと 0.25mlずつに分けた場合で比較しています。
結論からいうと、精子の生存率や運動率、高速運動精子の割合、ミトコンドリアの膜電位(細胞の元気さの指標)については、0.5mlずつ凍結していたほうが良かったようです。
他のパラメーターもすべてそうだというわけではなく、卵にくっついて進入していく過程で重要となるアクロゾームやクロマチンの状態は0.25mlのほうが良かったようです。
ただし、アクロゾームの状態が良かったのは融解直後のことで、時間が経てば差がなくなり、実際に卵に進入する精子の数を比べてみると、差がなかったということです。(これはHemizona Asseyといって、卵子を半分に割って、そこに進入する精子の数を比べるという実験です。)
…結論からいうと、全体的に0.5ずつのほうが0.25ずつよりも精子にとって良かった、ということになっています。
容器のサイズについても検討しています。
余裕があって空気が入っている場合とぴったりおさまって空気が入る余地のない容器に入れた場合で、空気の有無によっては差がないと結論しています。
あくまで凍結するときの量が大事で、大きいほうがよいというのが結論です。
当院では、トータルの精液量とか、保存したい数にもよりますが、基本1mlずつの小分けにして凍結しています。保存する精液量の単位をいくらにすればいいのか、ということは考えたことがなく、日常業務に差し支えることもなかったし、大差ないと思っていたので、今回のこの論文で考えさせられました。
ただ、論文では0.5mlと0.25mlの2種類しか検討していませんから、もう少し様々な量での検討が必要だと思います。