2014年1月号Fertility Sterilityの記事より

2014年1月号Fertility Sterilityの記事より

医師の田口早桐です。

Long gonadotropin-releasing hormone agonist versus short agonist versus antagonist regimens in poor responders undergoing in vitro fertilization: a randomized controlled trial.

最初のIVFで、刺激法での排卵誘発に対して低反応だった(卵があまり育たなかった)40才未満の女性を3群に分け、次にそれぞれ、アゴニスト法であるロング法とショート法、そしてアンタゴニスト法の三つの方法を試して、採卵数や成熟卵の数、受精率などを比べてみた、という研究です。

それぞれ30症例ずつを比べています。
結論としては、ロング法の群が他の2群に比べて採卵数が有意に多かったが、採卵までにかかった時間と注射量も多かった、というものでした。
妊娠率、生産率に関しては差がありませんでした。
採卵数という点から言うとロング法が優っていると書かれています。

当院のホームページでもこの三法の比較はしていますが、失敗が少ないのでファーストチョイスとしてはショート法を行うことが多いです。
http://www.oakclinic-group.com/funin/ss_thinking.html

ただ、実際に刺激をしてみて卵巣の反応が悪かった場合で明らかに次回も刺激に対して低反応が予測される場合には、低刺激法に切り替えることが多いのが現状です。
http://www.oakclinic-group.com/funin/treatment.html

同じ方法を繰り返すことはあまりしませんし、ましてやロング法に切り替えることはほぼしませんから、このデータは参考になりました。
当院ではロング法は、前周期からの下垂体抑制が必要になることと、どうしても注射量が増えてしまうので、採卵日のコントロールが必要な例やPCO症例にのみ使用することが多いのです。

ただ、この論文の中でも、採卵数は増えたものの、成熟卵子の数(ICSI症例でしか分かりませんが)、さらに受精率は3群間で有意差なしとのことでしたので、結果としては、あまり大差ないとも言えます。

排卵誘発法の選択は、それぞれの周期の結果はもとより、治療全体の成功に大きく影響すると思います。
一人一人にとって、一回一回の周期がとても大切です。
今後も手元のデータと発表されたデータを比較しつつ、その人に合った方法を考えて行きたいと思います。