排卵誘発神話…その1

排卵誘発神話…その1

医師の田口早桐です。

先日、排卵誘発法について患者さんから質問がありました。
同様の質問を良く受けますので、ここで私の意見を述べさせていただきます。

自然周期でとれた卵の方が、刺激周期でとれた卵よりも、質がよい??

結論から言うと、そんなことはありません。自然周期や低刺激の場合は1、2個の卵子しか採卵できませんから、発育して胚移植に至る割合が多いように感じるかもしれません

それとは反対に、刺激周期で10個程度採卵できた場合でも、受精しない卵があったり、未熟卵があったり、発育停止する卵があったりで、効率が悪いのではないかと思ってしまう気持ちは良く分かります。
また、自然に卵巣内で淘汰されて発育してくる卵の状態がよいような気がしますし、注射を連日打つことに対する心配などもあるでしょう。

しかし、妊娠率を見てみると、全年齢の結果を母数にしても、刺激周期では最低20%は得られるのに対し、低刺激法では7%程度といいます。大きく違いが出ています。

また、金銭的な面でも、一見刺激周期は注射回数が多いのでお金がかかるように思いますが、余剰卵の凍結が可能なことも多いので、その場合は新鮮周期で着床しなくても、凍結胚を融解して移植すればよいので、コストが抑えられます。

さらに少々欲張りではありますが、次子のことを考えると、凍結卵は多くあるほうが有利です。
例えば38歳で体外受精によって第一子を妊娠した場合、出産授乳等終えてから次の子供、と思っても、40歳過ぎていることが多く、排卵誘発に対する反応も、卵子の質も、一人目のときより格段に劣っていて、成功までに時間が掛かることが多いのですが、以前の凍結卵があれば、非常に有利です。
効率のよい人は、一回の採卵で第三子まで作っています。

ただし、卵巣の予備能が少なくて排卵誘発に対して反応の悪い人は、話が違います。
刺激周期でも低刺激でも、取れる卵子の数にあまり違いがない場合は、刺激の程度を落として連続して採卵した方が(刺激周期では1から2周期のインターバルを置く)、結果的に多くの卵子を確保できるので、価値があります。

さらに続きます。