医師の田口早桐です。
今月7日から10日まで開催されたESHRE(European Society of Human Reproduction and Embryology)に出席していましたが、面白い演題がありました。
ひとつは「170ポンド(\26,000くらい)で体外受精が出来る!」というもの。
センセーショナルですが、これはちょっと大げさで、上記の値段は、培養の部分だけの話。
培養器やガス配管などがなくても、もっとシンプルな設備でできるよ、ということで、注射や採卵など全て含めての値段の話ではありません。
念のため。開発途上国などでの実用化を見込んでいるようです。
ベーキングソーダ(お菓子に使う、アレですよ)とシトラスジュース(普通のジュースですよ)で二酸化炭素ガスを発生させ、それを、ゴムの栓でぴったりと蓋をした試験管内に送ります。試験管には培養液があり、その中に卵子と精子がある、という仕組み。受精分割した胚を数日後に子宮へ戻します。
ベルギーのDr.Elkeによるこの発表、既に出産例もあるとのことですが、まだまだ安全性などの検証が必要なのは言うまでもありません。
体外受精の費用に関しては、我々も常々頭を悩ませていて、助成金もあるものの、いかに安く効果を上げるかが大事。かれこれ5年前くらいにはなりますが、色々議論した結果、できるだけシンプルにして20万円以下で提供しようとプランを組みました。以後その方法で多くの妊娠例が出ています。ほぼ自然周期採卵に近いやり方です。
ただ、このプランが合う人と合わない人がいます。
もっと標準的なやり方(刺激周期採卵)でしたほうが、多くの卵子がとれて凍結卵も確保でき、トータルでのコストが安くつくこともあります。先の話ではあっても、第二子、第三子の妊娠が、それで叶うこともありますから。
妊娠出産がゴールですので、それを踏まえた上で、一人一人に合った最適な方法を考えていくべきだと思います。