10月18日のNY timesの記事から

10月18日のNY timesの記事から

医師の田口早桐です。

子宮頸癌の原因がHPV (human papilloma virus)というウィルスの感染によるものであることは、ほぼ間違いない事実であると分かっています。

最近日本では、山中博士がノーベル章を受賞して話題になっていますが、HPVが子宮頸がんの原因であることを突き止めたハラルド・ツア・ハウゼン氏は、2008年にノーベル賞を受賞しています。

そして、そのウィルスは、主に性交渉で感染します。
ですから、性交渉未経験の女子に、高率にHPV感染を防ぐワクチンを接種してしまえば、子宮頸癌はほぼ無くなる、ということになります。今、日本でも公費で希望者に実施されています。

不妊症の治療中に、HPV感染による子宮膣部異型成(将来癌になるかも知れない状態)や初期の子宮癌が見つかって、その治療のために不妊治療が頓挫する、ということがたまにありますから、ワクチンで防げるのであれば是非防いでおいて欲しい、と思います。
が、一方で、せいぜい10代半ばの女子に「これで性交しても、感染しないから大丈夫。」と言ってしまってよいのか、とも思っていました。意味をあまり深く理解していない子も多いような気がするし、性交渉を始める時期を早めてしまわないかなあ、大丈夫かなあ、と。

しかし、10月18日付けのNew York Timesの記事で、Pediatrics誌に掲載された論文で、調査の結果、そのような懸念、つまり、ワクチンを打ったからといって性的にアクティブになる、という懸念は否定された、とありました。

1,400人に対する調査でワクチン接種を受けた人(三分の一)と受けていない人とのその後の行動を調査したそうです。サンプル数が少ないのが気にはなりますが、素直に考えて、まあそうだろうな、とは思います。
母親に連れられてワクチンを打ったからといって、そうそう行動が変わるわけではないでしょう。
ということは逆に、早すぎる無防備な性行動を防ぐために性感染症や妊娠の恐ろしさを教えても、それだけでは不十分ということになるのではないでしょうか。