AMH(アンチミュラー管ホルモン)とは、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、AMH濃度を測定することにより残存卵胞数の測定・卵巣年齢の推定をすることが可能です。
FSH(卵胞刺激ホルモン)も卵巣予備能の指標となるホルモンですが月経周期によって大きく変動するため、AMH濃度測定が最も早く正確に卵巣予備能の低下を感知できる検査と考えられています。
不妊治療で排卵誘発をすると、多数の卵胞が発育する卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になりやすいため、AMH検査の結果を踏まえて排卵誘発を調整する必要があります。
成熟の初期段階(一次卵胞~前胞状卵胞)にある卵胞からは、AMH(Anti-Mullerian hormone, 抗ミュラー管ホルモン)というホルモンが分泌されます。
AMHの値は血液検査で測定でき、値が高ければ、卵胞のストックがたくさんあると推定されます。
逆に値が低ければ、閉経が近い可能性があります。
閉経は、通常は50才前後で迎えますが、20代女性の0.1%、30代女性の1%に早発閉経が起こります。
AMH検査をすることで、早発閉経の可能性がないかどうかを知る助けとなります。
しかし、AMHの値が低いからといって妊娠できないというわけではなく、逆に高いから妊娠しやすいということでもありません。
重要なのは卵胞の数ではなく、卵子の質です。
女性の卵巣の中には、生まれつきたくさんの原始卵胞があり、初経の頃より原始卵胞が活発化して成熟し、約190日かかって排卵します。
AMHは前胞状卵胞から分泌され、その測定値と発育卵胞の数は相関します。
従って、AMH濃度を測定することによって、残存する卵胞の数を測定し、卵巣年齢が何歳くらいか推定することができるのです。
卵胞の成熟を促す卵胞刺激ホルモン(FSH)も卵巣予備能の指標となるホルモンです。
卵巣機能が低下すると上昇することが分かっていますが、FSHは月経周期によって大きく変動するため、FSHの値から卵巣年齢を正確に予測することは困難です。
従ってAMHの測定は、最も早く正確に卵巣予備能の低下を感知できる検査と考えられます。
発育卵胞の数は25歳~30歳をピークに年齢とともに減少し、同時に血液中のAMH濃度も減少していきます。
AMH低濃度では、自然排卵が起こりにくいだけでなく、不妊治療の際に排卵誘発に反応しないことが多くなり、 タイミング療法や人工授精、体外受精を予定していても、卵胞が発育しないため治療を断念せざるを得ないという事態が懸念されます。
そのような事態を避けるためには卵巣年齢を把握しておくことが重要です。
また、卵巣内の発育卵胞数を知ることによって適切な排卵誘発法を選択することができるため、 逆に卵胞が育ちすぎて卵巣が腫れてしまう卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクを下げることができ、効率良く治療を進めることができます。
発育卵胞
卵巣中に蓄えられている発達前の卵胞。
卵子のもとが入っている。
前胞状卵胞
層が厚くなり、卵胞腔が出来はじめた卵胞。
胞状卵胞
卵胞が大きくなるとホルモンかがさらに分泌され、大きくなる。
成熟卵胞
排卵直前の卵胞。グラーフ卵胞とも呼ばれる。
通常の場合、月経周期の始めの頃は卵巣内にいくつかの卵胞が発育しますが、排卵時期が近づくとそのうちの1個だけが大きくなります。
これを主席卵胞と呼びます。
主席卵胞はホルモンの刺激を受けて成熟し、排卵します。
多嚢腫胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵時期が近づいても主席卵胞が発育せず、卵巣内に小さな卵胞がたくさんある状態です。
排卵が起こりにくくなり、不妊や無月経、稀発月経などの可能性があります。
多嚢腫胞性卵巣ではAMH値が高くなります。
また、卵巣過剰刺激症候群(OHSS:排卵誘発に過剰に反応して多数の卵胞が発育し、卵巣が腫れる状態)は、体外受精で卵子の数をふやすために卵巣刺激治療を行い、これによって起こりうる副作用です。
排卵後に卵巣が腫大するとともに、おなかに水がたまったり、重症の場合には血栓症を引き起こしたりします。
卵巣過剰刺激症候群を発症した場合は大抵は軽症であり、安静にしていれば軽快することが多いですが、呼吸障害や腎機能障害など重症化する場合には症状に合わせて治療が行われます。
卵巣の状態は不妊治療の成否に大きく関わってきます。
AMHが高いとき、つまり多嚢腫胞性卵巣では卵巣過剰刺激症候群になりやすいので、排卵誘発法を調整して刺激を減らす必要があります。
逆に、肥満や外因性FSH投与、重度内膜症、卵巣嚢腫手術後等、AMHが低いとき、つまり卵巣予備能力が低い状態では、卵巣への刺激が足りないと卵胞が育たないので、刺激を増やす必要があります。
また、卵巣備能力が低くなると刺激を増やしても反応しにくくなるので、AMH値が低い場合は早めに治療のステップアップすることをお勧めします。
次の方が、検査対象となります。
費用:7,250円(税込7,975円)