前回はオーク住吉産婦人科のベテラン胚培養士の天野奈美子氏に、胚培養士に仕事内容に関して話を伺いました。
今回は、男性不妊診療・手術を得意分野とする医師の渡邊倫子氏に男性の生殖機能・不妊検査に関して話を聞いてみたいと思います。
医師 渡邊倫子
女性よりも緩やかであるが35歳を境目に衰えはじめ、40歳、50歳を境目に加齢のスピードは速くなっていきます。
そのため、不妊は女性だけの問題でなく、ご主人の年齢も1つの要因として不妊治療を開始していただければと思います。
実際にどの程度の割合で妊娠をするのか見てみましょう。
下図は男性を年齢別に4群に分け1年間の累積妊娠率を現したグラフです。
※「Mohamed A. et al,Fertli Steril 79;1520-1527,2003」のデータ参照
男性が20歳未満()の場合、1年後には90%の割合で相手の女性が妊娠に至っています。
20‐39()歳では78%、40‐49歳()では62%、50歳以上()で25%となっています。
男性の年齢が高くなるにつれ、相手の女性が妊娠しにくくなります。
もちろん男性の年齢が高くても相手の女性が妊娠する可能性もありますが、確率は上図のように下がるのです。
精液検査は最低2回行うことを勧めています。WHOでは3回を推奨しています。
精液の所見は射精までの条件等により大きくばらつきがあります。そのため、複数回の検査を行うことを推奨しています。
2021年9月末にWHOの基準が以下の通り変更になりました。
項目 | 下記基準値 | |
---|---|---|
第5版(2010年) | 第6版(2021年) | |
精液量 | 1.5cc | 1.4cc |
精子濃度 | 1500万/ml | 1600万/ml |
総精子数 | 3900万 | 3900万 |
運動率 | 40% | 42% |
前進運動率 | 32% | 30% |
生存率 | 58% | 54% |
正常形態率 | 4% | 4% |
(WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen, 6th edよりデータ参照)
WHOの基準は妊娠に至った下位5%の平均になりますので、超えていたから妊娠には問題ない、下回っていたから妊娠しないというわけではありません。あくまでも目安と考えてください。
WHOの推奨の検査で、精液検査の他にもDFI検査が新しく追加されました。
精子の断片化率をみる検査です。不妊はもちろん、流産を繰り返される方にも良いといわれています。
DFI検査の例(株式会社パートナーズより引用)
女性側がホルモン値や超音波の検査をしている間に、男性側は複数回の精液検査やDFI+ORP検査を行っています。
そこで、結果に異状がある場合は精策静脈瘤の有無を検査していきます。
その結果により、一般不妊治療を始める・続けるか、ARTにステップアップするかを相談していくことになります。
オーク会では泌尿科のDr.と連携し、採卵と同日にTESEを行うことができます。
TESEの場合、精子の数が少ないことや、何度もTESEを行うことができません。
そのため、まずはTESEを行った当日に凍結していない精子を用いて顕微授精を行うことで、TESEで採取した精子をベストな状態で使用することができます。
もちろん、カップルによって卵子と精子のどちらが貴重かということは変わってきますので、カップルの状況に合わせてTESEや採卵のスケジュールを組んでいきます。
オーク会では精子が見つからない場合は、採取した全ての組織を見終わるまで精子を探します。
すぐに精子がいた場合や、顕微授精に必要な精子が確保できた場合はその時点で残りの組織の凍結を行います。
施設によってはタイムリミットを決めて、それまでに精子が見つからなかった場合は『精子がいない』という判断をするところもありますが、オーク会では精子が見つからない場合は『どこかに精子が1匹いるかもしれない』、『少ししか見なかったあの組織にもしかしたら精子がいたかもしれない』ということがないように全ての組織を検査します。
プロフィール横浜市立大学卒業 岩本Dr.よりメッセージHPでもご挨拶させて頂きましたが4月1日より男性不妊外来を担当致します岩本です。 直接外来で診察致しますのは山崎一恭男性不妊専門医です。 |
プロフィール筑波大学医学専門学群卒業卒業。筑波学園病院で勤務。 山崎Dr.よりメッセージ準備中です |