妊娠前遺伝子診断(保因者スクリーニング)

この妊娠前遺伝子診断(保因者スクリーニング)は、これから妊娠を望む全てのカップルにお勧めする検査です。
この検査により、お二人のお子さまが遺伝性疾患にかかるリスクを調べることができます(※1)。

卵巣予備能検査とはイメージ

妊娠前遺伝子診断の検査対象

これから妊娠を望む全てのカップル。
特に次のカップルには、この検査をお勧めしています。

  • ご家族または近親者に遺伝性疾患を患っている方がいるカップル。
  • 遺伝性疾患が原因で亡くなった近親者がいるカップル。
  • 既にあなたのパートナーが遺伝性疾患を患っていたり保因者であることが分かっているカップル。

保因者とは

ヒトは一対(2本で1組)の染色体(ゲノム)を持っています。
そのため、例えばフェニルケトン尿症のような常染色体劣性遺伝の遺伝性疾患の場合、一方の染色体が遺伝性疾患を引き起こす変異を持っていたとしても、もう一方が正常であれば遺伝性疾患を発症しません。
このように遺伝性疾患を引き起こす変異を持った遺伝子を持っていても、正常な遺伝子を同時に持つことで発症しない人を保因者と呼びます。

偶然に常染色体劣性遺伝の遺伝性疾患の保因者同士がカップルになった場合、子どもは25%の確率で遺伝性疾患を引き起こす遺伝子のみを持ち、その結果として遺伝性疾患を発症します。
また50%の確率で子どもは保因者になります。(図1)

保因者図

また赤緑色覚異常や血友病のようなX連鎖劣性遺伝の遺伝性疾患では、母親が保因者の場合は、父親が正常型の遺伝子のみを持っていても男児は50%の確率で発症し、女児は50%の確率で保因者になります。(図2)

保因者であるか正常な遺伝子のみを持つかは、外見や通常の検査では区別がつきません。
そこで保因者スクリーニング(キャリア・スクリーニング)では、直接遺伝子に変異があるかを調べます。

保因者の割合

これまでの研究によると、ヒトは平均2.8個の遺伝性疾患の保因者となっているとのことです(※2)。
また別の108個の遺伝子に限定した研究では、約4人に一人がいずれかの遺伝性疾患の保因者とのことです。
そして20人に一人は複数の遺伝性疾患の保因者とのことです(※3)。

このように高い確率で遺伝性疾患の保因者になっていることが明らかになったため、米国産科婦人科学会は妊娠を望む全てのカップルがこの検査を受けることを推奨しています(※4)。

妊娠前遺伝子診断の検査内容

この検査では、遺伝性疾患の原因となる信頼性の高い変異をほぼ全て網羅する2000種類の遺伝子を選び、それをNGS(次世代シーケンサー)で検査します。
その結果、被験者が遺伝性疾患の保因者であるか明らかにすると共に、お子様が遺伝性疾患を発症するリスクを調べることができます(注1, 5)。

保因者スクリーニングは、これまではゲノム全体または全エクソン領域を調べていました。
そのため必要な時間とコストが大きく一般的ではありませんでした。
しかしこの検査では、調べる遺伝子を厳選することで従来に比べて必要な時間とコストを大幅に削減しています。

2000遺伝子の選択基準

検査する遺伝子は、次の基準を元に選択しています。

  • 保因者の頻度が高い。
  • 早期に発症する遺伝性疾患。
  • 重篤な症状を示す遺伝性疾患。
  • 生活の質を著しく損なう遺伝性疾患。

こうして選択した2000遺伝子は、ヒトの変異コレクションHGMD2017.4に登録されている変異の内、遺伝性疾患の原因となる信頼性の高い変異をほぼ全て網羅しています

妊娠前遺伝子診断の検体

この検査には腕から採血した血液を約10ml使用します。

妊娠前遺伝子診断の検査期間

この検査を受けていただくには、採血前にカウンセリングを受けていただく必要があります。
検査を希望される方はスタッフにお申しつけ頂き、ご予約をお取りください。

結果をお伝えできるまで、採血後約1.5ヶ月かかります。
検査結果は、医師よりご説明をさせていただきます。

遺伝性疾患を引き起こす変異が見つかった場合

カップルがお二人とも同じ遺伝性疾患の保因者であることが明らかになった場合、または優性遺伝をする遺伝性疾患遺伝子の変異が見つかった場合、

(1)遺伝性疾患を発症しない胚を選んで移植(妊娠)する着床前診断(PGD またはPGT-M)という方法があります。
(2)提供卵子や精子を使って体外受精や人工授精を行うことで遺伝性疾患を回避することも可能です。

ただし日本産科婦人科学会の会告により、着床前診断や提供卵子・提供精子を用いた生殖医療には制限が設けられています。詳しくはスタッフまでお問い合わせください。

また先天性代謝異常のように出生後すぐに治療を開始することで正常な発達を期待できる遺伝性疾患もあります。そこで、この検査により遺伝性疾患を持った子どもが出生する可能性が分かっていれば、出生直後から治療を開始する準備を事前に整えておくことができます。

妊娠前遺伝子診断の検査料金

  検査料金
税抜き価格 税込み価格
1人の場合 CGT plus ¥100,000 ¥110,000
CGT exome ¥114,280 ¥125,700
染色体G分染法(オプション) ¥35,000 ¥38,500
カップルで CGT plus ¥142,850 ¥157,130
CGT exome ¥171,420 ¥188,560
染色体G分染法(オプション) ¥70,000 ¥77,000

※別途 採血料を申し受けます。(1人1回につき¥500)
※料金は予告なく変更になる場合がございます。
※両親の染色体異常は一般に思われているより多い(一般的な均衡転座の割合は400人に一人ですが、不育症カップルでは5~10%)ため、オプションで染色体G分染法の検査も受けていただけます。


※1 この検査を受けて保因者ではないとされた場合でも、技術的限界や遺伝子の複製過程で偶然生じた変異によりお子様に症状が現れる場合もあります。
またこの検査に含まれない遺伝子の変異や染色体の構造異常、その他現在不明の原因等によりお子様に遺伝性疾患や先天的異常の症状が現れる可能性があります。

※2 Carrier Testing for Severe Childhood Recessive Diseases by Next-Generation Sequencing. Bell CJ, at al. (2011) SciTranslMed. 3(65):65ar4

※3 An empirical estimate of carrier frequencies for 400+ causal Mendelian variants: results from an ethnically diverse clinical sample of 23,453 individuals., Lazarin GA, et al. (2013) GenetMed. 15(3):178-86

※4 Carrier Screening for Genetic Conditions. ACOG Committee Opinion Number 691, March 2017

※5 この検査により、検査を受けたご本人が遺伝性疾患を発症するリスクが明らかになる場合があります。