不妊に悩む男性の8割は、造精機能に問題があるとされています。
精子の数が少なくなり、動きが悪くなる状態を「造精機能障害」といいます。
造精機能障害の半数以上は原因不明であり、この原因不明の造精機能障害のことを「特発性造精機能障害」といいます。
原因不明だったとしても、生活習慣を改善したりサプリメントなどの薬物療法で改善することもあります。
加齢によっても、精液の量や精子濃度、運動率などの造精機能は低下しますが、造精機能障害で中等度のものは、食事や生活習慣を見直すことにより回復することが多くあります。
精子の健康状態は生活習慣に大きく影響を受けます。
当然、仕事上のご都合もあってなかなか難しいとは思いますが、疲れている方は日常生活の改善から始めることが大切です。
以下に注意したい日常の生活習慣の例をあげます。
規則正しく、バランスの良い食事を心がけましょう。
肉や乳製品などに多く含まれている飽和脂肪酸の摂りすぎは、精子の濃度に悪影響を与えてしまいますが、シーフード、鶏肉、ナッツ、果物や野菜に含まれている、不飽和脂肪酸であるオメガ3脂肪酸の摂取には、精子形状に好影響を与えるという報告があります。
男性の1日の睡眠時間が6時間未満の場合、パートナーの妊娠率は43%低下し、9時間以上の場合は42%低下すると言われています。
寝不足でも寝すぎでも、生殖機能に影響を及ぼしますので、規則正しい生活を心がけることが大切です。
肥満の男性の精子は、数・濃度・運動率が低く、奇形精子が多いので、男性不妊を促進します。
また、精巣機能は体温より2~3℃低い状態で機能するので、座りっぱなしでいると精巣温度が上昇し、精子形成を妨げます。
精巣を温めないように、通気性が良く、ゆったりとした下着を身に着けることをおすすめします。
喫煙は体へ老化のストレス(酸化ストレス)をかけ、精子の数・運動率・形状に悪影響を及ぼすため、禁煙が必要です。
酸化ストレスを下げるような抗酸化のサプリメントは、精子の濃度や運動率を改善することが知られています。
具体的に以下のサプリメントは、精子所見(総精子数・精子濃度・精子運動率)を改善します。
原因不明の造精機能障害は、男性不妊症の中で最も多く、確実に妊娠を保証するような薬や手術があるわけではありません。
また、生活習慣の改善や、酸化ストレスを下げるサプリメントが効果的ですが、効果は限定的で妊娠につながらない可能性もあります。
男女ともに年齢が高くなるほど妊娠率は低くなるので、長期間パートナーが妊娠できていない場合は、できるだけ早く受診し、積極的な不妊治療を受けることが必要です。
そのほかに、薬剤が精子に影響を与えることがあります。
精子形成には男性ホルモンが必要なのですが、例えば男性型脱毛症治療薬の「プロペシア」は抗男性ホルモン剤であり、精子形成を妨げます。
「チガソン」は皮膚科の薬ですが催奇形性があるため服用中は妊娠を勧められません。
そのほかの薬剤として、ステロイド、サラゾピリン(潰瘍性大腸炎の薬)、抗潰瘍薬、麻薬、アルコールなどがあげられます。
精子形成には約70日必要なため、そうした薬剤を内服している場合、治療開始のためには内服終了後約3ヶ月の時間が必要です。
また、体に対するダメージが避けられない抗がん剤をこれから受けられる方は、先に精子の凍結保存をすることをお勧めします。