着床前診断に用いられる検査は、染色体を調べる検査と遺伝子を調べる検査があります。
検査法 | 検査の対象 | 検査の目的 |
---|---|---|
aCGH法(アレイCGH)、 FISH法 |
染色体 | 習慣流産などを予防するため |
PCR法 | 遺伝子 | 遺伝性の病気を予防するため |
着床前診断の最新の検査方法です。
染色体は、22種類の常染色体と2種類の性染色体からなる24種類の染色体全てを調べることができます。
検査できるのは、トリソミーなどの染色体の数の異常や、不均衡転座などの構造異常です。
受精卵由来のDNAサンプルを正常なDNAサンプルと比較して、異常を検出します。
まず、受精卵由来のDNAをWGA(Whole Genome Amplification)という方法で増幅させ、赤色の蛍光色素で標識をつけます。
また、正常なDNAサンプルには、緑色の蛍光色素で標識をつけておきます。
この2つのDNAサンプルをDNAアレイ※1と呼ばれる分析ツールとハイブリダイゼーション反応をさせ、蛍光スキャナで読み取ります。
正常であれば、2つのDNAサンプルの色素は同量なので、中間色の黄色を発光します。
しかし、異常があると、DNA量に相違があるので、発光する色が赤色や緑色に偏ります。
この蛍光強度の比を数値化してグラフ化することで染色体の異常を調べます。
※1 一般的には、数cm角の基盤に既知の検出用DNAを固定配置したもの。
Anver Kulviev, Svetlana Rechitsky and Oleg Verlinsky : ATLAS OF PREIMPLANTATION GENETIC DIAGNOSIS THIRD EDITION : CRC Press
aCGH法で正確に診断できる確率は97%以上です。
しかし検査の手順の中で行うDNA増幅過程でのエラーなどが起こりえるため、診断の間違いの可能性はゼロではありません。
染色体の特定の部位を検査することができ、染色体の構造異常、数の異常を検出できます。
目的とする染色体の特定のDNA配列だけに結合する蛍光色素をつけたプローブ(DNAの断片)を受精卵由来の細胞とハイブリダイゼーションさせ、蛍光顕微鏡で標識のついた染色体の部位を確認し、異常を識別します。
FISH法で検査できる染色体は最大12種類のため、検査の主流はaCGH法になってきています。
Anver Kulviev, Svetlana Rechitsky and Oleg Verlinsky : ATLAS OF PREIMPLANTATION GENETIC DIAGNOSIS THIRD EDITION : CRC Press
遺伝子疾患を診断する事ができる検査です。
受精卵から1つの細胞の核を取り出し、DNAを増幅し、特定の遺伝子疾患があるかどうかを検査します。
この検査は、優性疾患、劣性疾患を含む単一遺伝子疾患を診断するために用いられ、極微量のDNAでも増幅できるので、PCR法は親子鑑定や犯罪捜査にも用いられています。
全染色体のスクリーニングと遺伝子型の決定が可能です。
aCGHとは異なり、比較のためのサンプルDNAやハイブリダイゼーションが必要ではなく、検査対象のDNAだけで行うことができます。
染色体の数の異常や、不均衡転座などの構造異常のほか、片親性ダイソミーに起因するコピー数変化のない染色体構造異常を検出することができます。
DNA塩基配列決定機器の開発が進み、これまでと原理の異なるシーケンス技術が登場しました。
これにより、解析処理能力が大幅に向上し、短時間で信頼性の高い検査結果が得られるようになってきています。
最新の次世代シーケンサーを用いると、昔の機器では何年もかかったヒトゲノム(30億塩基対)の解読を1日で終えることが可能です。
着床前診断の一般的な情報を提供しています。